▼ 会計帳簿-01-
くあっ、と出てきたあくびを噛み殺し蝋燭の火をたよりに真っ暗な廊下を進んでいく。眠いなー、なんて思いながら自室に向かっていると1つの部屋から明かりが漏れていた。
「こらっ、お前ら寝るな!気合いが足りん!」
そこは会計室で、部屋から聞こえてきたのは文次郎の声。こんな遅くまで何をやってるんだろ。
その部屋の前まで歩いていき襖を開ける。そこには、こくりこくりと寝ながら帳簿をつけている会計委員の子達と、隈をより一層濃くした文次郎がいた。
『あちゃ〜……。』
「おっ、蓮夜どうした?」
『文次郎、まだ帳簿やってたのか?それに委員のみんなも。』
起きているのは文次郎と田村。神崎は………ああ、駄目だ。目を開けたまま寝てる。佐吉は筆を持ったままで、団蔵は机に顔を突っ伏して寝てる。
『はぁ……。田村、みんなを部屋に運ぶから手伝ってくれ。』
「あっ、はい。わかりました。」
「っちょ、おい!まだ帳簿が終わってないんだぞ!」
団蔵を抱き抱えた俺に、文次郎が突っかかってくる。もう、ギンギンに熱いのはいいけど夜は寝かしてやりなよ。
『明日もみんな授業だろう?ちゃんと寝ないと眠くて授業に集中できないじゃないか。な?』
「うっ……。」
『それに、』
俺の意見が正しい思ったのだろう。言葉を詰まらせた文次郎に俺は一呼吸置く。そして真剣な顔をして文次郎の目を見つめた。
『文次郎みたいな酷い隈が、会計委員のみんなにできてしまったら、それこそ一大事だ。』
ずこっ、と横で転けそうになった田村の反応は面白かった。
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