雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 変装名人-03-


しばらくの沈黙の後、重々しく口を開いたのは山田先生の変装をしている彼だった。そして、その声はもう山田先生のモノではなかった。

「……はあ…いつ気づいたんです?」
『「なんだ蓮夜。もう疲れたのか?」ってところからだな。』
「!……最初からじゃないですか。」

俺がはじめから彼の正体を見抜いていたことが意外だったのか心底驚いていた。

「なんで、わかったんですか?」
『え?だって山田先生は、俺のこと"蓮夜"って呼ばないもの。』
「えっ!?うそ………。」
『まあ嘘だけどな。』
「……は?」

あり得ないはったりに彼は目をまんまるにしたり、嘘だとさらっと言った時には口をぽかんと開けて唖然としたり。反応が正直すぎて可愛いすぎるな。
え、年下をからかうなんて性格が悪いって?先に仕掛けてきたのはあっちだから、別にいいんだよ。しかし本当、良い顔してくれる。彼はからかい甲斐がある子だね。
ふふ、と笑えば彼はからかわれているのが分かったのか少し眉を下げ苦笑した。

「……参りました。私は5年ろ組の鉢屋三郎です。」

さっと山田先生の変装を解くと、そこには見たことのある顔があった。ああ、思い出した。

『その顔も変装だよな。』

確か、友達の顔を借りてるんだよな。
すると彼はまた凄く吃驚していた。

「……なん、で…?」
『ふふ、なんとなくだよ。じゃあもう行くな。』

アニメの知識がなくても分かるさ。素顔をそう易々と他人に見せないのが、変装を得意とする忍のやり方だから。部下もそうだった。彼の本当の顔は一度しかみたことがなかったな。

くしゃっと、鉢屋三郎の頭を撫でてから踵を返して俺は吉野先生の元へ向かった。



***



「どうしたの三郎?そんなとこに突っ立て……。」

廊下にただ立ち尽くす同輩を見て、鉢屋三郎と瓜二つ顔が首を傾げた。

「…なあ、雷蔵。私あの人のこと気に入ったぞ。」

唐突な言葉に雷蔵と呼ばれた彼はまた首を傾げる。僕の質問の答えになってないんだけどなぁ。まあ、三郎だししょうがないか。

「あの人って?」
「蓮夜さんだ。」
「えっ!三郎、もう蓮夜さんと話したのか?」

もう蓮夜と話をしたことにも、三郎が今日の朝に初めてあった人のことを気に入ったと言ったことにも、雷蔵は驚いて少し声が大きくなっていた。
何故なら普段ならあり得ないことだから。人嫌いの彼がこんなにすぐになつくなんて。

「ああ、面白い人だったぞ。」

三郎はにかっと笑った。



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