▼ 新人事務員-02-
『はあ。本当、会計室ってどこだよ。』
手元にある書類を見ながらとぼとぼ歩く。無意識にため息が出るのは仕方がないと思う。
忍術学園って城に負けぬほどの敷地があり、かなり大きい。保健室に行くのでさえ迷子になりそうだ。まあ、実際に迷子にはならないけど。
とにかく、会計室は二の次。俺は、保健室へと足を進めた。
さてさて、保健室に近づいていくたびに、がやがやと騒がしい声がだんだんと大きくなってくる。騒がしい保健室の中にある気配は全部で6つ。とにかく入ろうかと手を戸にかけた。
『失礼しま「う、うわぁー」……す。』
保健室の戸を開けると同時に俺目掛けて人が飛んできた。………あれ?デジャブだ。そう思ったのも一瞬で、次の瞬間には尻もちをついていた。いや、避けることもできたんだが俺が避けてしまえば飛んできた人は顔面から床とキスしてしまうからな。それは可哀想なのでやめておいた。
ちなみに飛んできた人は俺の上に乗った状態だ。
「いてててて!!ああ!すみません。大丈夫ですか?」
俺の上に乗った彼は、体を起こしてから、自分の下にいる俺の存在に気づいた。
「あ、蓮夜。」
飛んできた人は伊作だった。
ああ、納得。さすが不運委員会委員長。
俺を見てぱちくりと目を瞬かせて吃驚する伊作は可愛い。うん、リアルに男から見ても可愛いと思う。でも流石に、うん。
『ごめん伊作……。そろそろ降りて?』
「あ、ごごごごめん!」
俺の言葉に伊作は慌てて飛び起きて俺を助け起こした。そしてひたすらに謝りながら散らかってしまった書類を拾ってくれる。
『ありがとな。』
ぽんぽんと頭を撫でればニコッと笑った伊作に俺も笑いかけた。
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