雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 狙われた斉藤親子-04-


ただいま、と土井先生の家の玄関をくぐる。

『っ!』
「「「おひょぉおおお!!」」」

違和感に気づき咄嗟に飛び退いた俺は罠にかかることはなかったが、は組のみんなは仲良くそのまま地面に消えていった。
……やっぱり、仕掛けてると思ったよ。兵太夫、三治郎。ここ、一応借家だって知ってる?土井先生のこと見てみて。苦虫を噛み潰したような顔してるよ。

「建物に"入ったとたんに落とし穴"ってのは忍者屋敷の基本でしょ!」
『「…いや、ここ忍者屋敷じゃないから…。」』

しかしこの穴の形は、まさか……。
中でくつろいでいる4年い組コンビの気配に頭を抱えた。ったく、お前らはからくりコンビを止める側だろう。

「蓮夜さーん、また僕の穴に落ちてくれませんでしたねぇ。」
「仕方がない!蓮夜さんだからな!」

むうと頬を膨らませた喜八郎と、得意気に鼻を膨らました滝夜叉丸の登場に俺と土井先生はため息をついた。まったく、なにやってんだが。

『なんでお前達までここにいるんだ?』
「我々は登校の途中だったのですが、買い物に行く兵太夫達に会って今回の事件を聞いたものですから。」
「なにかお手伝いできることがあるかもと思って。それに蓮夜さんにも早く会いたかったし。」

早く会いたかったと言ってくれるのは嬉しいが、だからといって人の家に穴を掘っちゃいけません。ていうか早く会いたいと思ってるのに、穴には落とそうって考えてるのはどうなの。

「…うん?ちょっと待て。兵太夫と三治郎が買い物ってなにを買いに出かけたんだ?」
「買ったのは先生の後ろと、あっちの炭櫃に!」
「後ろは……米、炭櫃は…………魚!?」
「米はきり丸のためにひめのめしにしました!」

土井先生の問いにえっへんと胸を張って答える兵太夫と三治郎に俺は口角が緩む。かわいいなあ。ちゃんと頼まれたことしましたよ、誉めて、と顔に書いてある2人は本当に可愛い。ぎゅっと抱き締めたくなるな。

「しかしこれだけの米と魚を買う銭をどうしたのだ?」
「蓮夜さんが渡してくれましたー!」

ばっ、と勢いよく振り返って俺を見た土井先生に何でもないように笑った。まったく大袈裟なんですから。

『休暇中に家に上がり込んで、お世話になったお礼だと思ってください。』
「………気を使うなよ…。これぐらい私が出す。」
『駄目ですよ、家賃まだ払ってないでしょ。』
「…………あ、」

手で顔を覆った土井先生は家賃のことを本当に忘れてたみたいだ。そういうたまに抜けてるとこがあるのが俺は好きなんだけど。
米や魚のお金は世話になったことを思えば本当に微々たるものだ。むしろ受け取って貰えなければ困る。そう言えば、土井先生は困ったように笑って頷いてくれた。

「家賃払いに行くか〜……。」
『ですね。』
「おっと、その前に……出席とるぞー!!」
「「「おー!」」」

元気よく手を上げたよい子達とは別に複数の気配。うーん、この気配は………、あ。

『お久しぶりですね。』

出窓を開ければそこには風魔流忍術学校の山野金太先生と6年生の錫高野与四郎くん、それから古沢仁之進さんがいた。山野先生の気配は分かりずらかったから確証はなかったけど、2人だけで来るはずないからいると思ったよ。

「蓮夜くん久しぶりだね。2人の気配は駄々漏れだったかな?」
『いえいえ、ちゃんと消せてましたよ。ただちょっと敏感なもので。』

まあ、先生達はプロ中のプロなので俺よりも早く気づいてるかと思いますが。すると、与四郎くんも仁之進さんも苦笑いを溢した。

「まだまだ鍛練がたんねーべ。」
「全くだべ。」


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