雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 狙われた斉藤親子-03-


「残念ながらそう簡単にはいかないようだ。」

わいわいと盛り上がる中でゆらりと家に入ってきた戸部先生に、は組の子達が一斉に押し掛けた。
突然のことに気圧された戸部先生は土井先生に助けを求める。申し訳なさそうに通訳する土井先生に俺は苦笑をこぼした。いつだって土井先生は苦労性だな。

「よし、では最初の質問から答えよう。」

ええっと、最初の質問は「暗殺者との戦いどうなったのですか。」だね。

「2人の暗殺者を町のはずれの古寺まで追い詰めたのだが……。」

覆面を切って確認してみれば、よくよく見覚えのある万寿鳥と土寿鳥だったらしい。
風魔忍者を大量に暗殺したりとそれなりに腕のある奴等だが、学園長の命を何度も狙っては失敗している。忍術学園が本気を出せば脅威と言う存在ではない。が、油断は禁物だよね。

あれ?でも確か……、

『2人は風魔流忍術学校の山野金田先生と6年生の錫高野与四郎くんに捕まったはずだったのでは?』
「それに、万寿鳥・土寿鳥は暗殺専門でどこの忍者隊にも所属していないはずですよね?」

俺と三木ヱ門の言葉に土井先生は喜三太から預かった山野先生の手紙を取り出した。どうやら、その辺の事が手紙に書いてあるらしい。

どれどれ、
【牢屋に放り込んでおいた暗殺者が牢を破って逃走した。そちらに向かうかもしれないので注意してほしい。万寿鳥・土寿鳥を脱走させるために忍者が襲ってきたのだ。どこの忍者か全くわからないが、ものすごく腕の立つ奴等だった。】

ふむ、2人を脱走させこちらに差し向けたのがその腕の立つ忍達ならば、斉藤家が所属していた忍者隊の者ということか。否、そんなに単純だろうか。元の依頼主が分からぬように、二重・三重と股をかけて依頼することもよくある。でもそうだとしたら、そこまでして正体を明かしたくないということになる。ううむ、一体なんなんだろうね。わからん。

『戸部先生。今、万寿鳥と土寿鳥は?』
「ああ、それなんだがーーー。奴等を追い詰めた時に邪魔が入ってな。現れたのは2人の忍だ。袖箭を打たれたが、その時山田先生と利吉くんがタイミングよく来てくれてね。斉藤家も心配だったから、山田先生達にあの場を任せてこちらに戻ってきたのだ。」

そうだったのか。しかし、袖箭を使う忍か。
それって、

「「「それって、ドクササコの凄腕忍者じゃないですかっ!!!」」」
『っうわ、』

くわ、と顔を大きくして詰め寄ってくるは組の子達とタカ丸くんに圧倒されて、座ったまま後ろ向けにひっくり返るところだった。びっくりした。危ない危ない。

「あーあ、でもなんかガッカリだな。」
「なにが?」

頭の後ろで手を組んで、難しそうな顔をしてたきり丸が前のめりになって口を開いた。

「これでタカ丸さん家がドクササコ忍者って分かったわけだろ?ドクササコといえば、ドクタケと肩を並べるほど評判の悪い城だろ?そんな城の忍者だったなんてさ〜。」
『そうとは限らないよ。』
「ああ、どうやら何処かの忍者隊がドクササコに頼んで、ドクササコはさらに万寿鳥・土寿鳥に暗殺させようとしたらしい。」

さっきも言ったけど、元の依頼主が分からぬように、二重・三重と股をかけて依頼することは本当によくある事だからね。
すると、みんなはそこまでして正体を明かしたくない忍者とはいったいどこの所属なのかと眉を寄せて考え出した。
とにかく、斉藤家に長居するのは危険だし移動するべきだな。

「では一先ず、土井先生の家にお邪魔しよう。」

戸部先生の一言で土井先生が抗議の悲鳴を上げたのは言うまでもない。
きり丸も長期休暇中仕事三昧だったのに、最後の最後の休みがぶっ飛んだことでかなりショックを受けてる。兵太夫に頼んでおいたご飯で機嫌直してくれるといいんだけど。

「そう言えば!」

土井先生の家へ向かう道中、庄左ヱ門がはっと思い出したように声をあげた。

『どうした?』
「1つ心配が……。」
『心配?』
「土井先生の家に留守番として残っているのが、兵太夫と三治郎です!」
『……ああ〜。』

成る程、言いたいことが分かった。
2人はからくりコンビだもんな。学園と同じ感覚で、土井先生の家をからくりだらけにしちゃうかもってわけね。
もしそうなってたら、俺的には土井先生の胃が心配になってくる。学園に戻る前に、仕掛け全部解除しといてあげよう。そうしよう。



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