雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 狙われた斉藤親子-02-


「さて、詳しい話を聞かせてくれ。」

髪結い所斉藤に向かいながら、土井先生が庄左ヱ門と団蔵に詳細を促した。

「僕たち一緒に登校しようと歩いてたときに、ものすごくヘンテコな髪型をしたやつらに出会ったんです。」
「あのすごい髪型はもしかしてタカ丸さんの仕業じゃないかと思って"髪結い所斉藤"へ行ってみたんです。そしたら……、」

店は荒らされていて、中には金吾と怪我をしたタカ丸くんとタカ丸くんのお父上・幸隆さんがいたらしい。

幸い戸部先生が紙を整えに金吾と一緒に店に来ていたから撃退できたのだという。不幸中の幸いということだね。 
戸部先生がそのまま怪しい奴等を追っていったらしいが、追跡しやすいようにとタカ丸くんが奴等の髪型をヘンな形に変えたんだって。

「『流石だな。』」
「はい、流石はカリスマ髪結いの息子さんです。」
「いや、流石は"元辻狩り"と言うべきでしょ。」

割って入ってきたきり丸に俺は、はぁと息を吐いた。留守番しとけっていったのに。しかも兵太夫と三治郎以外みんないるじゃないか。
兵太夫はあれかな。俺の頼みを聞いて残ってくれたんだろう。三治郎はその付き添いだろうね。伊達にコンビと言われるほど一緒にいてないもんな。

「「「こんばんはー!」」」

"髪結い所斉藤"ののれんをくぐる。これは、結構荒らされたな。でも2人の怪我は軽症のようだ。良かった。

「タカ丸さん強盗に襲われたって、」
「大丈夫?」
「いや、戸部先生がおっしゃるには、奴等は強盗ではなく………、」
「「「強盗ではなく………?」」」
「暗殺者、つまり……"刺客"だ、と。」
「「「ほげげーっ!刺客ー!?」」」

暗殺なんてタカ丸さんに似合わない、なんて失礼なことを言った良い子達に苦笑する。まず、似合うも似合わないも無いでしょうよ。狙われないのが一番なんだから。

タカ丸くんと幸隆さんが狙われた理由としては抜け忍だからだろう。タカ丸くんの祖父・幸丸さんはとある城の忍者隊の穴丑だったが、何も話さずに亡くなってしまったから、何処の忍者隊に所属していたかも何処が敵の城なのかも解らない。所属している忍者隊とはまったく連絡がつかない状態で十年は経っている。それに、たとえ連絡があったとしても2人は気づけないしね。
つまりは、連絡がつかないことで所属の忍者隊からは裏切られたと思われても可笑しくない。

タカ丸くんが編入した時から、学園長や教職員達はいずれこうなることは予想してた。でも、それでも受け入れた。あのときも思ったけど、やっぱり人が良すぎますよ、学園長先生。
でも、忍術学園に編入していたお陰で斉藤親子は運よく死なずに済んだ。そのことまで見越していたのか、否か。学園長の考えることは俺には分からないけど。

「でも…、暗殺者に狙われてるってのにタカ丸さんなんだかワクワクしてませんか?」
「そりゃそうさぁ。だって……これで我が家は何処の忍者なのかわかるんだもん。」

……呑気か。三木ヱ門も思わず顔を大きくして突っ込んでいる。分かる、分かるよその気持ち。
そして、良い子達。暗殺者に狙われるとかって格好良い、じゃないからね。タカ丸くんも照れてないでよ。全く困ったもんだ。



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