雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ どんぐりの背比べ-02-


ぞくり、と背筋に走った悪寒に辺りを見回した。
あれ?さっきまで端の方で呆れながらこっちを見ていた伏木蔵がいない。どこに言ったんだろう?なんて思うより先に目の前に現れたモノに目を見開いた。

『……………動くな……。』
「……え…?」

黒い装束に身を包み、嘴のついた黒い面をした忍が伏木蔵に苦無を突きつけていた。

これって敵?侵入者だよな?なんで?今は蓮夜さんもいるし先生達もいるのに侵入を許した?雑渡昆奈門じゃあるまいし……。周りにいる奴等も驚きすぎて声がでないみたいだ。え、え、どうしよう、どうしよう。こんなとき、は組ならどうしてるだろう。ああ、あいつらだったらこんなに動揺したりしないのかな。



***



目の前でオロオロと焦るい組とろ組の子達に罪悪感を感じながらも、これはみんなの成長の為と心を鬼にして殺気を飛ばす。
ああ、ろ組の子達が今にも倒れそう。い組も顔面蒼白。伏木蔵も苦無むけてごめんね。

『忍術学園の1年だな。こいつの命が惜しくば、言うことを聞け。』

さあ、どうするかな。は組の子達ならどうするだろうか。んー、状況をいち早く把握し、とんちんかんな事を言いつつも伏木蔵を上手く助け出す方法をすぐに模索し始めるだろう。でもここにいる子達はどうだろう。恐怖に震えるだけで誰も動けない。

ここは学園の中だ。明らかに一人で侵入した者の不利。打開策はいくらでもある。矢羽根を飛ばし教職員を呼ぶこともできるし、話を引き延ばし学園のサイドワインダーこと小松田さんや教職員が気付くまでの時間稼ぎをすることもできる。相手のレベルが冷静に図れ策を練ることができる者がこの中に一人でもいれば、最悪自分達だけで伏木蔵を奪還することもできる。
そう、ここにいるのがは組の子達なら……。自分達に合った方法でこの状況を打破できる。確信をもってそれは言える。

「ふしきぞ〜う……!」
「彦四郎、どうするんだよ。」
「おお前が考えろよ!」
「今、喧嘩してるバヤイじゃないだろ。」
「そんなこと言ったって!」

あらら、仲間割れし始めちゃってるよ。どうすればいいかわからないのと恐怖で頭が回らないのかな。

『学園長の庵まで案内しろ。…早くしないかっ!』

一歩踏み出し凄めば、もうみんな泣きそうな状態だ。ああ、駄目じゃないか。泣く前にしなきゃいけない事がたくさんあるだろう?

その時ある気配を察知しその場を慌てて退く。すると今まで立っていた場所に見知った人が勢い良く現れ、苦無片手に目をギラつかせていた。……怖っ。
ギロリと睨まれた途端に息が詰まった。だが、それも一瞬で、彼の纏っていた空気がすぐに柔らかくなった。いやあ、気づいてもらえてなかったらこれ戦闘になってたパターンだな。良かった。うん、本当に。

「ねえねえ、何やってるの蓮夜くん。」
『………雑渡さん、なんですぐばらしちゃうんですかぁ…。』

もう、なんとなく察しているくせに。俺の正体ばらしたの絶対わざとでしょう。

お面と苦無を懐にしまい纏っていた殺気を消せば、い組の子達は座り込んで、ろ組の子達は俺に駆け寄って足にしがみついてくる。足元から鼻をすする音が聞こえてちょっとだけやり過ぎたかな、と頭を描いた。



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