雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ どんぐりの背比べ-01-


ぎゃいぎゃいと騒がしい方へ足を向ける。
今日は上級生達が課外実習に行っていたり、1年は組の子達が第三協栄丸さんのところに遊びに行っていたり、といつもより人数が減った学園内はわりと平和だった。が、そこは腐っても忍術学園だ。事件ホイホイが外に出てようと人数が減ろうとやはりそうも簡単にはいかないらしい。喧騒は1年長屋の方からだった。

い組内で揉めてるのかと思いきや、まさかのい組とろ組が対立して喧嘩をしてる。い組と喧嘩するのはは組だけだと思ってたんだが勘違いだったみたいだ。

『……なんで喧嘩してるんだ?』
「ふうわっ!!」

ちょこんと端の方に座って喧嘩を傍観していた伏木蔵にぼそっと声をかければ、仰け反って驚くものだから思わず笑ってしまった。

「蓮夜さん、笑いすぎです〜。」
『いや、すまない。あまりに可愛らしかったからな。』

で、なんで喧嘩してるんだ。と聞けば実技でどちらが優秀なのかと言い争いになってると教えてくれた。え、本当に珍しい。は組がいないからこその喧嘩なのか否か。
事の発端は、休み時間中に実技の自主練習をしていたい組の手裏剣が的を外れてしまい近くを通りかかったろ組の子達に当たりそうになったことらしい。

「「ごめん、大丈夫か!」」
「うん平気だよ〜。」
「…っで、でも、避けないお前達も悪いんだぞ…!!」
「なにそれ、」
「そっちが打つの下手くそだったんじゃないか。」
「な、なんだと!!」
「は組にも実技じゃ負けてるくせにっ〜!」
「お前達も人のこと言えないだろ!!」


まあ、だいたいは想像できるな。伏木蔵はなんで喧嘩を傍観してるだけなんだと聞けば、喧嘩の途中で馬鹿らしくなったと返してくる。

「だって実際に僕達は、は組に実技では勝てませんから〜。どっちもどっちかな、て思っちゃったんですよ。それに堂々巡りの喧嘩ほど馬鹿らしいものはないですし。」
『……伏木蔵はときたま庄左ヱ門並みに落ち着いているよな。』
「褒めてくれてるんですかあ?」
『すっごくね。』

すると伏木蔵は今までの飄々とした雰囲気は何処にいったのか、ふにゃんと笑った。天使だ。天使がいるよ。だ・き・し・め・た・い。いや、自重しなくちゃいけないぞ、俺。いや、すごく今更なんだけどさ。
しかし、伏木蔵はあれだな。たまに読めない顔をする。庄左ヱ門が"冷静"なら伏木蔵は"冷淡"か。今までもそんな場面は何度も見てきてる。これは将来が恐い。しかし楽しみでもある。いったいどんな忍になるんだろう。ふふ、と笑みが溢れた。

『それよりそろそろ喧嘩止めなきゃな。』
「そうですね〜。」

伏木蔵と顔を見合わせれば、お互い悪戯な顔をしていた。うん、たまにはちょっと厳しくしなくてわね。

口布をあげて懐にいれていた面を被って伏木蔵を抱き上げた。1年生でも腰を抜かさない程度の殺気を纏えば、伏木蔵は楽しそうに笑った。
やっぱりこの子は凄いな。俺が絶対に傷つけないことを知っていても、嫌な顔する子のほうが多いのに。

『よーし、説教といきますか。』



prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -