雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 不法侵入常習犯-05-


保健室へと尊奈門さんと一緒に向かえば、中から伊作と伏木蔵、それから渦中の人物の声が聞こえてくる。
尊奈門さんは俺といるためか、はたまた小松田さんの入門表にサインしてきたからか、堂々と隣を歩いている。若干の殺気がひしひしと伝わってきているのは、この際あえて無視しようと思う。

スパン、と尊奈門さんが開け放った戸に伊作たちは目をぱちくりと瞬かせた。雑渡さんはといえば、伏木蔵を膝の上に乗せ笑いながら手をひらひらと振っているし、山本さんと高坂さんは頭を抱えている。そこで隣からぷつんっと何かが切れる音がした。

「………〜組頭っっ!!!」

一気に距離を詰めたかと思うと、伏木蔵に一言詫びてから抱き上げ伊作の膝の上に移動させた。そしてくわっと目を見開く。

「全く、あなたって人は!!仕事が山ほど残ってるんですよ、わかってるんですか!?それを今まさに嵐のごとく片付けて来てみればっ!………ったく小頭と高坂さんが来てるのにそれものらりくらりとかわして!大体、秋月も保健委員もいつもいつも暇じゃないんですよ!?」

一気に捲し立てたかと思うと、はあとため息をついて頭に手をあてた。

「いつもいつも探す方の身にもなってください……。」

その姿があまりにも頼りなくて、何故だか可愛くて。無性に愛でたくなったのは俺だけではなかったらしい。

「くくく、悪かった悪かった。」

目を細め尊奈門さんの頭を撫でる雑渡さんは至極楽しそうで。あの包帯の下で見えない口元は相当緩んでいるに違いない。

「じゃあ、そろそろ失礼しようか。」

そう言った途端、部下である彼らの目がきらっと輝いたのを俺は見逃さなかった。……本当苦労してるよな。

「あ、蓮夜くんお菓子ありがとね。」
『ええ。尊奈門さんをあまりこき使っては駄目ですよ?』
「善処するよ。」

にやっと笑った彼に、確信犯かと失笑する。まあ、それだけ雑渡さんは尊奈門さんを可愛がってるってことなんだろうけど。
じゃあね、と最後に優しく微笑んで帰っていった雑渡さんに俺は、次は何を用意しておこうかとふっと口元が緩んだ。



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