▼ 不法侵入常習犯-04-
茶菓子を食べ終えた2人は雑渡さんを迎えに保健室に迎えにいった。そして俺ももう来客も来ないだろうと部屋の片付けを始めた。だって他にする事がないんだもの。
しかし、茶菓子だけで彼らがあんなにも喜んでくれるとは。想定外の出来事だ。……今度、雑渡さんが来たら尊奈門さんをあまりパシらないように言っとかなければ。
片付けと言っても元々散らかってはいなかったので、小松田さんの机回りと書類整理だけで済んでしまった。うん、朱華と裏山に行こう。そう思ったら行動は早い。吉野先生の机に書き置きを残して、飼育小屋に向かう。俺の朱華もいるし、よく手伝いをするからと合鍵を木下先生から預かっているから職員室による必要もない。
飼育小屋の近くまで来れば朱華は俺の気配を感じ取ったのか、俺を呼ぶように大きく鳴き始めた。
『ふふ、朱華〜。狩りに行こうか!』
鍵を開ければ、勢いよくこちらに飛んできて腕に止まった。そして返事をするようにピィーッと鳴く。
ったく、本当に可愛いな。
その時、こちらに向かってくる人の気配を感じ俺はため息を吐いた。
『全く、あの人は困った人だ。』
音もなく俺の目の前に降り立った彼を見て、俺はお茶を出してあげられない今の状況に申し訳なくなった。…あと少し早かったら事務室にいたのになあ。
『お疲れ様です、尊奈門さん。』
声をかければ、優しく笑って軽く手をあげてくれるのでペコリと頭を下げる。これが尊奈門さんとのいつものやり取り。
「やあ、秋月。組頭は……??」
『雑渡さんなら山本さん達と一緒に医務室にいますよ。』
頭に手をあて、はあ〜っとため息を吐く尊奈門さんに俺は失笑する。あの2人が迎えに来てるのにまだ帰ってないんだもんなあ。
『………毎度毎度、大変ですね。』
「……………言わないでくれよ…。」
恐らく、忍務を光の速さのごとく終わらして迎えにきたのだろう。もともと疲労が見えていた彼の顔に、より一層疲れが増した気がした。
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