雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 不法侵入常習犯-02-雑渡side


今日も今日とて、門番をしている事務員の小松田くんに気づかれないようにそっと学園の塀を越える。そして屋根裏に忍び込んで彼の気配をさがした。

来るたびに、やっぱり1番最初には蓮夜くんに会いたいなあなんて思う。なんかね、ほっとするんだよ。伊作くんや伏木蔵には無い安心感?って言うのかな。とても15歳には見えないあの雰囲気と落ち着きが好きだ。

蓮夜くんがいるであろう事務室の天井を外して除き込めば、彼は呆れたようにため息をついた。

「私の顔を見てため息吐くなんて酷いね。」
『そりゃ、ため息も吐きたくなるでしょう。』

なんて言いながらも、私が1番に来ることを予測して暖かいお茶を用意してくれていた。うん、こう言うとこも好感もてるよね。あと、最近ここに来過ぎなのも自覚してる。でも忍務で忙しい時こそ会いたくなるんだよねえ。

「ねえねえ、蓮夜くんはいつタソガレドキに来てくれるんだい?」

何度目かわからない質問を問いかける。すると彼はちょっと困ったように、けれど本当に優しく優しく笑った。

『1つ確実に言えることは、そんな日は一生来ないってことですね。』
「まったく、つれないねぇ。」

毎回、同じ表情で同じ答えをくれる蓮夜くんに私は安心する。それほどまでに学園を愛している彼が私は好きなのだから。

ササガタケ忍軍の時の蓮夜くんは話でしか知らなかった。
ササガタケの組頭とはもともと好敵手だったから彼のことは聞いてた。あいつのお気に入りだと。ただササガタケが落ちた時に皆死んだと思っていた。だから、まさかあんなとこで話で聞いてた蓮夜くんに会えるとは思ってなかった。
いやむしろ最初は全く気づいてなかったね。調べてやっと、彼があの秋月蓮夜だと知った。
会うたびに分かっていった。あいつが蓮夜くんを気に入っていた理由が。こんな青年はそうそういない。だから皆彼に惹かれるのだろうな。

ササガタケの当主と同じぐらいに愛せる存在ができた彼は、これからも学園のために死力を尽くすのだろうね。そんな蓮夜くんを私は見守っていたいと思う。あいつが出来なかったことを。

まあでも、タソガレドキに来てほしいのは本気だから、これからも私は勧誘はし続けるけどね。



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