雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 不法侵入常習犯-01-


空が茜色に染まっていく中、俺は1人事務室でお茶を啜る。小松田さんは掃除をしながら学園の門番中。吉野先生は職員会議。俺はと言えば仕事を終わらせたのでたのですることなし。

んー、裏山で鍛練でもするかな。それか朱華と狩りに行くか……。そんなことを考えていてふと思った。"あたし"だったらこんな時、真っ先に携帯触って時間潰してただろうなあ、と。そう思ったら俺って変わったのかな、と感じる。まあこんな時代だから当たり前なのかもだけどさ。

『!!』

とある気配にピクッと反応して俺はため息をついた。全く、あの人はまた来たのか。そんなに伊作や伏木蔵のことが好きなの?ってかそうだとしてもしょっちゅう来すぎじゃない?

「やあ、蓮夜くん。」

がこん、と天井の板を外して包帯だらけの顔を覗かせたのは予想通り雑渡さんで、俺はもう一度ため息を吐いた。

「私の顔を見てため息吐くなんて酷いね。」
『そりゃ、ため息も吐きたくなるでしょう。』

にこにこと笑いながら部屋に降りてきた彼に俺はそっとお茶を出した。俺ってば優しい。

何故か彼は学園に来て一番最初に俺の元にくる。そして、一杯お茶を飲んでから伊作達に会いに行くのだ。だから雑渡さんの気配を感じたと同時に、俺はお茶を用意する。これが普通になってしまったのは良いことなのか悪いことなのか。まあ、忍たまの味方だと本人は言ってくれてるし、なんだかんだで義理堅い人なのでまあ大丈夫だろう。

「ねえねえ、蓮夜くんはいつタソガレドキに来てくれるんだい?」

至極当たり前のように言ってのける彼はなんと言うかよく飽きないよな。だってこれ、来るたびに言ってるんだぜ。

『1つ確実に言えることは、そんな日は一生来ないってことですね。』

にこり笑った俺の回答も、もはやデフォルトになりつつある。

「まったく、つれないねぇ。」

なんて雑渡さんは言うけれど、言葉と態度が釣り合ってない。俺が断るのをにやにや笑いながら楽しんでるように見えるんだが?……全く彼の考えていることはよくわからないや。
それより、と話題を変えれば雑渡さんはお茶を飲みながらこ視線をちらりと寄こした。

『最近、良く来すぎじゃないですか?尊奈門さん達また怒りますよ?』

いや本当に大袈裟とかじゃなくて、3日に1回ぐらいの確率で雑渡さんの顔見てると思うんだよな。え、なにどんだけ暇なの?ってレベルだ。……最近忙しくて困ってるって山本さんから聞いたんだけどなあ。

「最近忙しいし、組頭がいつも通り自由人すぎて……。どうしたら、仕事してくれるだろう?」

15歳が44歳に相談される図を想像してみてよ。かなりシュールだから。まあ、俺の精神年齢的には近いとは思うけど。でもねえ…?

「大丈夫だよ。怒られる前に私は逃げるからね。」

いや、そう言う問題じゃあないんですけど。絶対分かって言ってますよね。



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