雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ "女"に勝る"男"-04-


街に着いた俺達は、アルバイト先である白粉屋目指しすたすたと歩く。
いつも以上に痛い視線は、普段と違い男共からあびせられる。自分の女装姿に見惚れてくれるのはそりゃあ嬉しいけど、なんかもうウザイ。街について大して時間も経っていないのに、いったい何回声をかけられただろう。いい加減アルバイトに遅刻しそうなので止めて欲しいところである。

『きり子、間に合いそう?』

白粉屋に行くのにこれほど時間がかかるとは思っていなかったため、俺は困ったようにきり丸に問いかけた。

「うーん。まあ予想の範囲内ですから大丈夫ですわ、蓮花姉さん。」

クスクス笑うきり丸に俺はごめんねっと頭を軽く撫でた。それにしても、きり丸に姉さんと呼ばれるのはどこかくすぐったい。今日1日は俺ときり丸は設定上、姉妹だ。たった1日でも彼の家族と言う場所に居れることが、俺はこの上なく嬉しかった。

目的の白粉屋さんに着いたのは約束の時間ギリギリだった。きり丸がのれんを潜ってから俺も店に入る。店の中に並ぶ品物はどれも高級なものばかりで、こんな店のアルバイトにこぎつけたきり丸に俺は少し驚いた。

「いらっしゃいませ。……………ってきり子ちゃんじゃないか、待ってたよ!」

店の奥から出てきたのは、物腰が柔らかそうな初老の男性。彼は店に来たきり丸の姿を見るなり、嬉しそうに笑いかけた。それにきり丸も愛想良く返事を返している。

「きり子ちゃん、もしかしてもう一人のお手伝いって……。」

ちらっとこちらに目線を移した彼に俺はそっと微笑む。そして、彼の前に進み出て軽く頭を下げた。

『はじめまして。私はきり子の姉の蓮花と申します。』
「私はこの店の主人の源吉です。いやー、あまりにもお美しいお嬢さんで吃驚しましたよ。」
『ふふふ、お上手ですね。今日はきり子共々よろしくお願い致します。』

軽く頭を下げれば、源吉さんはこちらこそと目を細めて笑った。



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