雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ "女"に勝る"男"-02- きり丸side


今日は蓮夜さんが俺のアルバイトを手伝ってくれる日だ。

蓮夜さんは普段から休暇返上で仕事をしてる。
それもこれも学園長の突然の思いつきだったり、小松田さんのヘマだったり。今日はだって久々の休みなのに俺のアルバイトの手伝いをしてくれる。まあ、俺から頼み込んだんだけどな。なのに彼は嫌な顔1つもせずに、むしろ喜んでと言ってくれた。

本当に優しくて格好いい人だと思う。学園のみんなから慕われているのも頷ける。俺の大好きな土井先生も蓮夜さんのことを好きらしい。俺を見るときと同じように、"家族"を見るような目で蓮夜さんのことを優しく見ているのを俺は知ってる。

「蓮夜さーん!用意出来ましたかあ?」
『おう、ばっちりだ。』

今日は白粉屋でのアルバイトだ。
店主から綺麗な女の子がいたら品物がよく売れるからバイト代も弾むと言われた。だから蓮夜さんにも女装してもらうように頼のみこんだのだ。
今まで彼が女装姿を学園で見たことがなかったから、渋られるかと思ったがあっさり了承を得れた。
蓮夜さん曰く、女装する機会がなかっただけだそうだ。まさか女装姿を見れるとは露にも思ってなかったから、あまりにも嬉しくて昨日の夜からずっとうきうきしすぎて寝れなかった。

蓮夜さんの返事を聞いて、俺はどきどきしながら失礼しまーすと戸を開けた。

「うわあっ……!!」

驚きすぎて思わず俺は固まってしまった。いつもの蓮夜さんも充分すぎるほど綺麗だ。でも、女装した蓮夜さんはまた一段と綺麗だった。それはあの立花先輩にも勝るとも劣らないほどに。
きり丸、と2回ほど呼ばれて、俺ははっと我に返った。

「あ、あの…………すっげー綺麗っす////」

思わず出た言葉はありきたりすぎて。もっと上手に言えたらいいのにと思ってしまった。あまりにも綺麗すぎて蓮夜さんの顔をまともに見れなくて俺は思わず俯く。そしたら彼はぎゅぅっと俺をを抱き締めてきた。

ええええ!何するんですか、蓮夜さん!
不意討ちすぎて俺はまたピキっと固まった。そしてみるみる顔に熱が集まっていくのがわかる。抱きつかれるのはよくあるけれど、今日は女装姿。余計に恥ずかしくなってしまう。
蓮夜さんは俺の反応にくすくす笑って、俺の頬を両手で包み込んでから顔を合わされた。

『あら、きり子も充分可愛らしいし綺麗よ?』

女らしく、上品な笑みを浮かべる蓮夜さんに俺は照れながらも微笑み返した。蓮夜さんに差し出された手を繋げば、彼の暖かさが伝わってくる。ああ、幸せだ。

今、この瞬間、蓮夜さんのこの姿を独り占め出来ていることが俺はひどく嬉しかった。




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