▼ "女"に勝る"男"-01-
鏡に写る自分の姿を見た。うん、まあまあ良い感じじゃないか?
仕上げに竹成様の形見である花の簪で髪を結えば、俺は男から女になった。あ、その変装としての意味だけどな。
自分で言うのもなんだが、"あたし"はもともと中性的な顔だったし、今世の両親のお陰で普通よりはまあ顔の作りは多分だけど良い方だと思う。それに前世は女でもあったから化粧のコツはわかるし、女性らしさっていうのも知っている。それ故、女装は得意なものの1つだ。
「蓮夜さーん!用意出来ましたかあ?」
『おう、ばっちりだ。』
俺の部屋の前で声をかけてきたきり丸に軽く返事をすれば、彼は失礼しまーすと戸を開けた。
「うわあっーーー!!」
『……きり丸、どーした?』
きり丸は俺の女装姿を見たとたん、目を見開いて固まって動かなくなった。なんでた。どこか可笑しなところでもあったかと、手鏡で顔を覗き込んだが、別段変わったところは見つからない。もう一度、きり丸と彼の名を呼べば、きり丸ははっと我に返った。
「あ、あの………すっげー綺麗っす///」
耳まで赤くして俯くきり丸に俺はきゅんっと胸が高まった。なんなんだ、この可愛い生物は。咄嗟にぎゅぅっときり丸を抱き締めた。ますます顔を赤くするきり丸に俺は面白くなってくすくす笑う。そして彼の頬を両手で包み込み、顔を俺の方にそっと向けさせる。
『あら、きり子も充分可愛らしいし綺麗よ?』
女らしく、上品な笑みを浮かべればきり丸も照れながらも女の子っぽく優しく笑い返してくれた。
『さあ、早く街に行きましょうか。』
「そうですね、アルバイトにも遅れてしまいますし。」
そっと手を出せば、きり丸は嬉しそうにその手をぎゅっと握ってくれた。ふふふ、年下はやっぱり可愛いものだね。
きり丸と手を繋いだまま学園の中を歩いていれば、まさかの仙蔵に見つかってしまった。うーん、彼にはあまり女装姿を見られたくはなかったのだけど。
だってさ、作法委員会委員長だぜ?女よりも美しいと言われる仙蔵様だぜ?そんな人にあんまり俺の女装見られたくないじゃない?
いくら両親のお陰で普通よりは顔の作りはまあ良い方だと言っても仙蔵には足元にも及ばないからな。
「きり丸に、…あー、………蓮夜か…?」
『……うーん、逆に誰に見えるのかしら?』
口元を袖で隠しながら困ったように笑えば、仙蔵はほうと感嘆の声をあげた。
「普段でもだが、女装となるとまた一段と綺麗だ。」
…………えっと、え、誉められてる?あ、お世辞か。そうだよな。俺なんかより仙蔵のが綺麗だし、俺より綺麗な忍たまは山ほどいるしなあ。まあでも小平太や文次郎達よりは勝っていると思う。流石にあの女装に負けたら羞恥で生きていけない。
『ふふふ、お世辞でも仙蔵に誉められるのは嬉しいよ。』
へにゃりと笑えば、仙蔵にため息をつかれた。いや、仙蔵だけではなく手を繋いだままのきり丸にも。それに俺は首を傾げる他なかった。
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