雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 弱点を逆転-03-


バチバチと逆茂木が燃える音と焦げ臭い匂いが村全体に漂ってくる。前線にいた学園の者達や佐武衆の彼らは塹壕に避難し始める。俺は照星さんや土井先生達と同じ塹壕に潜り込んだ。

「本当に放っておいて良いのかね?あの辺は水を被ってないから燃えるぞ。」

そう言った照星さんに俺は苦笑いが溢れた。そうか、あの逆茂木の状態を彼は知らなかったな。

「大丈夫です。ーーーと言うか危ないですから火縄を持って逆茂木に近づかないで下さい。」

淡々と冷静に答える土井先生は昨晩俺とあの光景を目にしてる。しかし、昨晩あの逆茂木をみて俺はぞっとした。……いや、本当にあの火矢の数は一瞬焦ったね。昨日の昼に逆茂木の弱点を逆転していた兵太夫達を思い浮かべ、可愛らしい顔をしながらも案外彼らも鬼のようなことを仕出かす奴らだ、と俺はしみじみ感じた。

『兵太夫達が火が点けられたら大量の火矢が飛び出すように細工をしていたんですがね……。』

はははと苦笑をこぼせば、照星さんがますます首を傾げた。

「それが、推進式の大国火矢をまあ大量にですね………。」
『大量過ぎて、ちょっと………ね。』

その時、大きな音が聞こえたかと思うと、驚く光景が目の前に広がった。ようやく照星さんも俺と土井先生の言っていた意味が理解できたらしく唖然としていた。

「火矢、ではなく………。」
「逆茂木ごと飛んでったやないか〜っ!!!」

文次郎の盛大な突っ込みが俺たちの耳にまで届いてきた。佐武衆の皆さんも目の前の光景に何も言葉が出ないのかぽかんっと口を開けて呆然と逆茂木が飛んでいく様子を見ている。

「………地味な狙撃手家業が阿呆らしくなってくるな。」

ぼそっと不意に呟いた照星さんの言葉に俺は乾いた笑みが溢れてしまった。いや、本当にこれは派手すぎますよね。


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