▼ 弱点を逆転-01-
タソガレドキ軍からの10発目の砲弾が泥に止められた後、複数の声と足音が園田村に近づいてきた。
それは目視できる程の距離まで攻めてきたタソガレドキ軍の鉄砲隊だ。
しかし、こちらも準備万端だ。タソガレドキ軍の鉄砲隊が隊列を組み、鉄砲を構える時をじっと待つ。
因みに俺も佐武衆に混ざって火縄を構えている。普段は接近戦を得意としてるから火縄は持たないけど、火縄銃の重さと言い、火薬の臭いと言い、緊張感と言い、嫌いじゃないしむしろ好きなのだ。得意とも言えるくらいには。
「火蓋切って、狙って………。」
合図の声を聞きながら俺は狙いを定める。狙うはあの隊長のふざけた蟹の兜。
ふふ、ぶち抜いて差し上げよう。
「放てっ!」
その瞬間、タソガレドキ軍よりも早く佐武衆が一斉に撃ち出した。もちろん俺も例外なくね。いきなりの事にタソガレドキ軍の鉄砲隊は慌て出した。村人を相手にしてると思っていただろうからね。あ、俺の弾は正確に兜に当たった模様だ。彼は驚きで目を真ん丸にしてこちらを見てたよ。さて、上がった佐武の旗に彼らは一体何を思ったろうか。戦意喪失なんてしてくれたらそれが1番手っ取り早いんだけれど。
「放てっ!」
合図に合わせて次々と撃っていく。
俺は土井先生から火縄を受け取りながら撃っていたが、隣にいる照星さんの言葉に思わずそちらをガン見してしまった。
「若大夫、お父上にも渡してあげなさい。」
「全っ然平気…っ!気にしてないしっ!」
いやいやいや、と苦笑を溢す。泣いてるじゃないですか…。何故か虎若のお父上が不憫だった。
さてさて、我々の攻撃に堪らず逃げ出した隊長は部下をその場に置き去りにして去っていった。しかしまあ、部下を見捨てるのか。……別に敵同士だからどうでもいいのだけれど。
そして、置き去りにされた鉄砲隊に追い討ちをかけるように6年生を筆頭とした上級生達が姿を現した。
「……まいった…………。」
戦意喪失した彼らに更に孫兵が止めを刺すかのように声をあげる。
「あー!!!そこ動くな!!」
「え?」
だが、時すでに遅し。誰かがガブッと何かに噛まれるような嫌な音が鉄砲隊の耳に届いた。1人の隊員が手を目の高さまで上げてみれば、そこには赤い綺麗な色をしたマムシ。そう朱華の友達のジュンコがそこにいた。
「ジュンコー!どこ行ってたのー!?そんなばっちいもの噛んじゃ駄目っ!」
その言葉にずでんっと転けた俺は悪くないはず……だと思う。
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