雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 若大夫の作戦-04-


「「「石火矢の撃ちかたーっ!!」」」

は組のみんながアカペラで歌い出す。それに合わせて火薬委員が発射準備を進めてく。やばい。なんて面白い光景だ。胸がきゅんきゅんするぞ。

「まず砲腔を掃除して火薬と弾丸〜。」
「「「詰めましょ♪」」」
「安全のため親指で火門を塞ごう〜。」
「「「woo,woo♪」」」

補足としては 、火門を塞ぐときは熱い砲身から親指を守るために指サックをすること。でもそれも彼らはわかってるようだ。

「炸裂弾の導火線に点火したのち〜。」
「石火矢の火門に点火する、るる〜♪」

歌の内容も完璧。文句のつけようがないね。しまいには仙蔵も歌いだして、俺は吹き出しそうになった。
いや、……ね?まさかあの仙蔵がノリノリで歌うとは思わないだろう?やば、駄目、面白すぎる。くははははは、駄目だ。これは文次郎に見せたい。珍しすぎる光景に文次郎が戦慄するかもしれないな、ふふふ。

「いつまでやってんだ!!」

しかし歌い続けるみんなを止めたのは、珍しく大きな声と顔をした長次だった。

「……蓮夜笑ってないで止めろ……。」
『いや、悪い悪い。』

むすっとしながら、睨んできた長次に苦笑いする。俺、顔に出ないように笑うの我慢してたんだけどなあ。長次には俺が内心大笑いしてたのがバレてたようだ。

「もし石火矢の発射に失敗すれば、震天雷が砲の中で爆発してしまう…………慎重に………。」

一気に高まった緊張感にみんながゴクッと息を飲んだ。

「震天雷に点火っ!!石火矢に点火っ!!」

みんなが手に汗を握りながら見守る中、虎若が震天雷と石火矢に火をつける。すると、轟音を発しながら炸裂弾は石火矢を飛び出し池の堤に着弾、そして発射した時よりも大きな音を出して爆発した。
さすが虎若。狙いが正確だ。
見事に池の堤を1発で破ることができ、水がゴオオオッと地響きを立てながら草地に流れ出す。程なくすれば、草地全体がキラキラと太陽を反射して輝くぐらいに水浸しになった。
ふふふ、上出来上出来。

俺達が照星さんや虎若の父上のいる前線に戻れば、照星さんが遠眼鏡を覗きこみタソガレドキ軍の砲兵隊の様子を見ていた。

「そろそろ砲撃が来ますな。」
「儂は虎の仕事を信じる。」

虎若の父上の言葉に俺も周りのみんなも頷く。だって頭の中では、この先の結果は想像できてるから。とその時、タソガレドキ軍の方から轟音と煙が上がった。

『来た………。』

だが、その砲弾は草地でバウンドすることなく水をたっぷりと含んだ泥に埋もれた。

「………止まった!」
「成功だぁっ!!」

土井先生の声にみんながわぁっと歓声をあげる。虎若も酷く嬉しそうに喜んでいた。まあそりゃ、当たり前か。

『よくやったな、虎若。』

頭を撫でれば彼は少し照れ臭そうに、でも誇らしそうに笑った。


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