▼ 若大夫の作戦-03-
「虎若、この震天雷を使え。」
「震天雷?」
「いいか?普通の砲弾は着弾しても爆発的する訳じゃない。その点、この震天雷は時限信管が付いていて、砲弾そのものが爆発するんだ。」
仙蔵はごそごそと箱から出してきた大きな砲弾を虎若達に見せる。しかし、初めて見る砲弾に虎若は首を傾げた。興味津々で見ていたみんなの中から、はいっと元気よくしんべヱの手が挙がった。
「はーい。何故、爆発しないと駄目なんですかー?」
『爆発しない砲弾は城の壁などを破壊するには効果があるかも知れないけれど、池の堤を破るのには明らかに向いてないんだ。』
わかったかな?と言えば、肯定の返事が返ってきたので頭をぽんぽんっと撫でた。
「だから、この震天雷を使うんだ。これなら1発で堤を破ることが出来る。」
因みに、この炸裂砲弾の"震天雷"は長次が持ち出し厳禁の本の中から製造法を見つけて、それを元に仙蔵が製作したものである。これは文次郎情報だ。
そしてそして、嬉々として震天雷を製作していた仙蔵は怖かったらしい。これも文次郎からの情報ね。
「でも先輩。こんなでっかい砲弾、ユリ子には入りませんよ?」
「ふふふ、ちゃんと用意してある。」
困ったように話す虎若に仙蔵は自信ありげに答えて、ある場所を指差した。
「臼砲のキューちゃんだ!!」
「…こんなのよく運んできましたね。」
おおお、と感嘆の声がは組と火薬委員から漏れる。
虎若の言葉に仙蔵は何でもなかったと言う風に答えるが、長次が間髪入れずにボソッと答えた。
「……用具委員が必死で運んだ…………。」
「2度とやらねーからなぁっ!!!」
留三郎の怒りの声が聞こえてくるようである。まあ、こんだけ重いものを園田村までってのは、ね……。俺だって嫌だもの。
prev / next