雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 若大夫の作戦-02-


「砲身が熱くなったんでしょう。冷めるまで砲撃が止みます。」
「うむ、その間に跳弾を止める手立てを取らねば。」
「若大夫、砲弾が跳ねなくするにはどうしたらいい?」

照星さんと虎若のお父上が、虎若を見つめた。こうして、答えを虎若に見つけさせるのだ。未来の佐武衆を担う虎若自身の成長のために。

「虎若〜〜っ!手伝って〜!」

頭を悩ませる虎若に、きり丸から声がかかった。それに反応して、虎若は照星さんに軽く頭を下げてから小走りできり丸達の元へ駆け寄る。

「どうしたの?」
「しんべヱのお尻が塹壕にめり込んじゃって抜けないんだ。」

俺と土井先生も彼らに近寄って、その様子を見る。あらら、がっつりはまっちゃってるな。

「底を踏み抜いて泥の層に足を取られてるんだ。」

土井先生の言葉に虎若がはっと気づく。それを横目に、俺もきり丸達を手伝おうと、しんべヱの脇をもって思いっきり引っ張った。すると、思ったよりも勢いよくスポンっとしんべヱのお尻が抜けたので、土井先生や虎若がいる方に倒れ込んでしまった。

『あいててて……。みんな大丈夫かー?』
「「「ふぁ〜い。」」」

のそっと立ち上がるみんなを掻き分けて、虎若が素早く三木ヱ門に詰め寄った。

「田村先輩!ユリ子をお借りします!!」

おおう、虎若ったら行動が早いな。でもユリ子じゃちょっと無理があるかも。……まあ、そこはたぶん仙蔵達が用意した"あの"砲弾を使うんだろうけど。そのための臼砲だろう。

「みんな手伝ってくれ!!」

虎若の掛け声で、は組のみんなが一緒についていく。それを照星さんや虎若のお父上は嬉しそうに見送った。
俺は虎若の作戦を見届けようか。みんなのペースに合わせて走りながら、会話に耳を傾けた。

「どうするの?」
「砲弾は泥のぬかるみに弱いんだ。だから、上の池の堤を石火矢でブッ壊して村の前の草地を水浸しにする!手潟さんに伝えてくれ!!」

その指示で団蔵は手潟さんの元へ走っていく。虎若の的確なその指示に、俺は嬉しくなって口元が緩む。すると、そこに仙蔵と長次が走ってきた。

「……なに笑ってるんだ、蓮夜。」
『いやあ子供の成長って早いよなぁ、しみじみ思ってさ。』

くすくす笑いながら答えた俺に仙蔵は「その台詞、爺臭いぞ。」と呆れたように言った。いや、まあ精神年齢的には可笑しくはないんどけどさ………。軽くグサッときた言葉に空笑いしてる俺をスルーして、虎若に協力を申し出てるあたり仙蔵はやっぱり酷いと思うね、うん。



prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -