▼ 若大夫の作戦-01-
緊張感が村全体に漂う。
遠眼鏡越しに、タソガレドキ軍の砲兵隊の様子を見ていれば、指揮官が指示を出した。その瞬間、ドオンッと轟音が辺りに鳴り響き、弾丸は園田村に目掛けて飛んできた。そう、草地をバウンドして。
「伏せーーーっ!!!」
虎若のお父上の声を合図にみんなが一斉に動く。先生や上級生は、すぐ側にいる下級生を庇うようにして地面に伏せた。
ーーーバキッ、ドカッ、ゴォン
砲弾は凄まじい威力で、楯をへし折り、壁を突き破り、地面を抉った。急いで生徒の無事を確認すれば、幸いみんな上手く避けれたようで、まだ怪我人はいない。だが、良かったと息つく隙もなく、次の砲弾が発射された音が聞こえた。まったく、村一つに対して容赦がない。
「退避ーーーっ!」
みんな塹壕に飛び込む。咄嗟に反応できなかった下級生達らは先生や上級生に塹壕に放り込まれていた。俺は照星さんや土井先生の隣で伏せながら、タソガレドキ軍の様子を伺いもって、攻撃を避ける。
防弾と瓦礫の雨が降り続くが、しばらくすれば防弾がぴたりと止んだ。みんながその様子に気付き、そおっと顔を塹壕から覗かせる。とその時、家の壁に食い込んでいた砲弾がポロっと地面に落ちた。ゴロゴロと転がって行った先は孫兵の頭上。
「っ危ない!」
咄嗟に文次郎がそれに気づいて、上に弾く。それを次は長次がトスすれば、防弾は小平太の真上に舞い上がった。
「レシーブじゃないぞ!トスでもないっ!!」
文次郎がそう言ったのにも関わらず、小平太は塹壕から飛び出し、真上に高くジャンプした。
「いけどーんアタッ、あ痛〜っ!」
本当に砲弾をアタックするとは。馬鹿だと思ったのは俺だけじゃないはず。ゴキッと嫌な音がしたのは至極当然の結果だろう。小平太の予想外すぎる行動に苦笑いが溢れる。そして、アタックし損ねた防弾は雷蔵の頭に当たり、地面に落ちた。大騒ぎしながら救護室に向かう雷蔵・三郎・小平太を見ながら照星さんが口を開く。
「それはさておき。」
『「さておくんですね……。」』
動じない照星さんに、俺と土井先生の言葉がハモった。
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