雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 曲者はこなもんさん-01-


すっかり夜も更け、一寸先も見えないほどの暗闇がつつむ。ただそんな中でも園田村だけは松明の火で明るく照らされている。

『ん?』

ふっと感じた学園の者ではない気配に俺は首を傾げた。侵入者か?辺りは文次郎や小平太.長次が見張っているはずなのに、それを掻い潜るとは。
侵入者のいる方へ走りながら、よくよく気配を読んでみればそれは俺の知っているもので、尚且つ一番会いたくない人のものだった。ああ、もう……。なんで単身ここまで来ちゃうかなあ、タソガレドキの組頭さんは。
救護所になっている建物の戸の前でそっと中の様子を伺う。

「あの時、君は私ばかりではなく敵・味方を問わず怪我人を手当てしていた。何故だ!?」
「それは僕が……保険委員だから!!」

中から聞こえてくる声は雑渡昆奈門と伊作のものだ。しかしそんなことよりも俺は2人の話の内容に頭を抱えたくなった。まったく、夏休みの宿題中に伊作は彼のことも介抱していたのか。

「…………。お前、忍者に向いてないんじゃないか?」
「よく言われます。」
「ククッ」

しばらくの沈黙の後、雑渡昆奈門は呆れたように呟く。そして、伊作の答えが余程面白かったのか、彼は口を押さえて笑っていた。とそこでふと思う。相手は敵の忍なはずなんだけどな。なんなんだ、この和やかな雰囲気は。一応、ここ敵陣なんだけどな。

「さて、それはそうといつまで隠れてるつもりだい。鴉……否、秋月蓮夜くん?」

あまりにもいきなりの事に俺はびくっと肩を震わす。気配を消していたのに見つかり、しかも名前までもが知られているときた。どこまで深く調べたのか知らないが、こんな時にただの事務員であるはずの俺を調べるなんて、余裕すぎるだろタソガレドキ忍軍。いや、雑渡昆奈門が規格外なのか……。

『いったい園田村に何のご用で?』

観念した俺は襖を開け中に入る。すると伊作は驚いた顔で俺を見た。きっと俺の気配に気づかなかったのだろう。いや、気配を消してたからその反応が俺的には嬉しいんだけどね。


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