▼ 学園の総力結集-06-
逆茂木を並べている村の東側の斜面に向かえば、たくさんの忍たまが学年問わず集まって作業をしていた。
ふと感じた敵意と少しの火薬の匂いに俺は辺りを見回す。だが見る限りは逆茂木を設置している忍たまがいるだけ。そう、見ただけなら。目には見えなくても確かに感じる駄々もれの人の気配に俺は勢いよく走り出す。ちらっと草の影から見えたのはタソガレドキの斥候。そして構えている火縄銃の先にいたのは井桁模様の制服で。くそっ、間に合ってくれよ。俺は舌打ちを溢し、走るスピードを上げた。
だが、俺の視界の端に火縄銃を斥候に向けている彼を捉えた瞬間、焦りで支配されていた俺の中にも少し余裕ができた。あぁ大丈夫だ、と。
バァァンと言う音と同時に、俺は狙われていた彼の前に滑り込んで盾になったが痛みはこなかった。……さすが照星さん。やっぱり大丈夫だった。
「「「虎若!!蓮夜さん!!」」」
団蔵・兵太夫・金吾・三治郎の4人が斜面を勢いよく滑り降りてくる。そして俺達を守るように木の板を盾にして立ち、酷く焦った顔をしてこちらを見上げた。
『大丈夫だよ、ありがとう。』
にこりと微笑めばまだ4人の表情は硬いものの少しは穏やかになった。危険も去ったところで、俺は助けてくれた照星さんの方に向けて少し頭を下げた。すると彼はなんでもないかのようにフッと不敵に笑う。 駄目だ、男前すぎだ。その顔は反則ですよ。
「タソガレドキの斥候が功をあせったようですな。」
照星さんは、佐武衆の頭領であり虎若のお父上の佐武昌義に話しかける。すると、虎若のお父上は安堵からくるため息を1つ吐いた。
「心配かけさせおって……。」
「間に合ってよかった。」
虎若のお父上を先頭に園田村へぞろぞろと馬に乗った鉄砲隊が入ってくる。それを乙名の手潟さんが迎えた。
「よくぞ来てくださいました!」
「我ら佐武衆、喜んで加勢致す。」
しかし、手潟さんが佐武衆に援軍の依頼をしていたのは聞かされていたが、改めて考えると手潟さんのぬかりの無さは素晴らしい。頭の回転が速いと言うか、人の上に立つ素質があると言うか。それに比べて……、駄目すぎるオーマガトキ城主を思うと、俺は何故か少し苛ついてしまった。しょうがない。
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