雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 学園の総力結集-03-


一段落ついたところで、小平太と文次郎は園田村の周りの偵察、伊作は救護所を作るための包帯集め、俺は集まっている生徒達の現状把握へと、俺達は部屋から出て各々の持ち場へと足を運んだ。

村の中を歩いていれば視界に写ったのはこの事件が始まってからずっと気にかけていた人物の内の1人、兵助の背中だった。彼の名を大きな声で呼べば、兵助はくるっとこちらを振り返った。そして少し驚いたように声をあげる。

「あっ、蓮夜さん!」

駆け寄ってくる兵助に俺は元気そうだ、とほっと胸を撫で下ろした。怪我が回復したと聞いていても、やはり自分の目で確かめるまでは少し不安だったのだ。

『久しぶりだな。怪我の具合はどうだ?』
「すっかり治りました。もうピンピンしてます。」

良かった、俺が頭をぽんっと撫でれば兵助は心配かけましたと頭を下げた。しかし次の瞬間、兵助はぐいっと顔を近づけて俺の目を見つめた。そんなに見つめられたら照れるんだけど。

「それより、蓮夜さん!タソガレドキ忍軍の組頭と戦ったそうですね。」
『あー、まあな。三郎達から聞いたのか。』
「はい。それに怪我もしたと言ってました。」

おい。三郎と雷蔵はその事を言ったのか。一応、廃寺にいたメンバーには俺が怪我をした事を黙っててほしいと頼んだ筈なんだけど。まあ、6年も全員知ってたから何となく予想はしてたけど。口止めの意味が全く無かった。

「本当になんて無茶するんですか!」

心配そうに怒る兵助に俺は苦笑を溢した。兵助だって無茶して怪我したのにね。まぁお互い様ってことだ。

「怪我の具合はどうですか?」
『ふふ、たいしたことないさ。』

だが、兵助はまだ納得してないのか俺をじぃっと見つめる。それから1つため息を溢して小さく呟いた。

「まあ、……蓮夜さんらしいって言えばらしいのだ。」
『それ誉めてる?』
「誉めてはないです。」

すぱん、と即答で言い切った兵助はいっそ清々しかった。しかし、どういう事だそれは。いつも俺が無茶ばっかしてるって言いたいのか。なんとも失敬だなあ。一応は考えてるぞ。一応はな。

「今は私達もいるんですから何かあれば頼ってくださいね。」
『ああ、わかってるよ。』

兵助と話していれば、がやがやと辺りがより一層騒がしくなってきた。村に着いた学園の生徒が増えてきたのだろうな。俺はもう一度、兵助の頭を撫でてから、現状把握のため村の中を駆け回った。



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