▼ 到着そして休息-04-
きり丸と土井先生から視線を外し、俺の膝の上にちょこんと座っているしんべヱを見る。みんなから重い重いって言われているしんべヱだけど俺からしたら大したことはないんだよな。そのしんべヱが両手でおにぎりをもしゃもしゃと頬張っている。おやまあ、可愛い。
「本当にこんな小さな村でタソガレドキと戦うつもりなんですか?」
「手潟さんは最初から戦うつもりだったんだよ。来るときに見ただろう?防御用の陣営具がすでに用意されている。」
「ああ、そういえば!」
おにぎりを食べながら庄左ヱ門が隣に座っている雷蔵と三郎に質問をすれば、さらりと2人は答える。山田先生がおぼんに人数分のお茶を乗せて持ってきながら2人の言葉を続けた。
「小さな村だが園田村は敵から攻めにくい地形になっている。ほら、お茶でも飲みなさい。」
1つずつ配られるお茶を俺もお礼を告げて受けとった。本当は俺がするはずだったのに山田先生から「安静にしてなさい」と言われ渋々座っているのだ。雑用ぐらいしたってどうってことないのにな。何だかんだで過保護なのだ。いや、嬉しいけどね。
「ここは、背後には山があり周りは川と沼に囲まれている。それに正面は田や畑。」
だが、しんべヱ・虎若・伊助・兵太夫の4人は山田先生の話なんて聞こえてないのだろう。だってもう半分夢の中だもの。しんべヱだけは食べるのに夢中なだけなのだけれど。唯一しっかり聞いているのは庄左ヱ門と団蔵だけだ。その団蔵も欠伸を溢している。
「先生、もう限界みたいです。」
「そうだな。それじゃあ、みんな食べたら一眠りしなさい。」
伊作が苦笑すれば山田先生もみんなを見渡してから声をかけた。
『ほら、寝に行こうか。』
もう起きてるのかもわからないみんなを伊作と雷蔵・三郎と手分けして抱き上げて部屋に連れて行く。
『ゆっくりおやすみ……。』
全員の頭を優しく撫でて起こさないように部屋を出た。夢の中ではのんびりしておくれ。これからまた慌ただしくなるだろうからね。
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