雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 学園vsタソガレドキ-01-


夜がゆっくりと更けていく。
合流場所にしていた廃寺の周りには複数の気配を感じる。だが、これだけな筈がない。相手はタソガレドキ忍軍だ。

「囲まれています。」
「では、打ち合わせ通りに。」

破れている障子の間から外の様子を伺っていた利吉さんがこちらを振り向いた。山田先生の言葉に利吉さんはこくりと頷いて仙蔵と視線を交わす。仙蔵はくるくると片手で焙烙火矢をお手玉のように回していた。

「まず、私と立花くんが陽動を仕掛け、そのまま喜三太救出チームに合流する。」
「光が強めです。気をつけて。」
「ああ。」

利吉さんは、仙蔵の投げた焙烙火矢を軽く受け止める。なんて無駄のない動きだ。しかし、この組み合わせはなかなか珍しい気がするな。

さて、2人が陽動を仕掛けたその隙に日向先生と三次郎・金吾が忍術学園に援軍要請に走る。他のメンバーは、つまり俺もだが園田村へと向かう。乱太郎は足が早いので先触れに、そしてその護衛に伊作が付く、という感じに纏まった。

「山田先生!私達も喜三太救出に行きたいです!」

堪らなくなって乱太郎が声をあげた。
気持ちはわからなくないんだけれど。

『乱太郎、喜三太は利吉さんや仙蔵に任せておけば心配ないさ。それに厚着先生もいらっしゃるだろ?』
「今は自分の忍務に専念しよう。情報をもたらすのが忍者の本分だろう?」

これだけの実力者が揃っていたら失敗することなんてないさ。伊作はぽんっと乱太郎の頭に手を乗せてなだめるように、そして仙蔵は優しく安心させるように語りかける。流石、凄く頼りになる先輩だ。とても安心感があるし、今の言葉で任せて大丈夫だと思えた。こんな先輩達に囲まれてたら、そりゃ後輩も良い子に育つわけだ。

「伊作先輩、立花先輩………。はい、わかりました!」
「うん!滝夜叉丸や左門もついてるしね。」

だが、その発言には組のみんなが焦ったように首を振った。なんでた。可笑しいな、結構頼りになるんだけどあの2人。それに滝夜叉丸は面倒見もいいしね。

「ああ、それと蓮夜。」

不意に山田先生に名を呼ばれる。何だろうと思えばぽんっと頭を撫でられた。突然の出来事に俺は目を見開いた。

「怪我をしているんだ。無理はするなよ。」

うわあ、お気遣い感謝します。でも足手まといになりたくはないですから、とことん頑張らさせて頂きますがね。痛み止めも伊作から貰って飲んでるし。
っと言うか、いつもは頭撫でる側だからかは分からないが、かなり照れ臭い。



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