雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 戦の実態-03-


「始めから全部まとめて良く考えてごらん。」
「……大前提として、」

苦笑しながらも土井先生は、は組の子達にゆっくり考えさせようとする。すると、何かを考えていた庄左ヱ門が不意に口を開いた。

「手潟さんの様子から考えると、オーマガトキ城主・大間賀時曲時は人望が無く、領地から税金が取れない。まして園田村のように村々は"惣"と言う自治組織を作って領主に対抗するようになってきている……。」

おお!流石、は組の頭脳・黒木庄左ヱ門。なかなか良い線をついてる。土井先生もにこにことしながら隣で耳を傾けていた。そこで、はっと何かに気づいたきり丸が「わかったー!!」と勢い良く立ち上がった。ふふ、やっぱりわかったか。お金の話だもんね。と言うことで次はきり丸のターンらしい。

「どっちもやる気がないこの戦、オーマガとタソガレは実はグルだったんだぁ!」
「え、どう言うこと?」
「タソガレドキが攻め込んで来るぞぉ、と噂を広めれば自分達の安全を保証して欲しいオーマガ領の村々は"かばいの制札"欲しさになりふり構わず、銭や兵糧をタソガレ軍に差し出す!」

きり丸のこの言葉で、は組の子達も戦の実態が全て分かったらしい。なんて賢い子達だろう。お兄さん嬉しいよ。

「そうか!それがグルだったとしたら……。」
「タソガレ側はどっさり受け取った金品の一部をオーマガに渡すに違いない!!」

「俺が貰いたかったぁぁあぁあぁ!!」

顔を大きくして泣くきり丸に俺やは組の皆がずっこける。気持ちはよくわかります。きり丸じゃないよ、は組の子達のね。本当、お金・銭のことになるときり丸がコワイ。目の輝き方が違うもんな。

「せっかくきり丸は銭の問題になると頭の回転が早いって感心したのに。」
「1ヶ月前の合戦で本当の勝敗は決まってたんだね。」

うん、みんな大正解。
は組のみんなの頭を撫で回して誉めたいが、生憎全員が固まった場所にいないので時間がかかりそうだ。と言うことで残念だが止めておくことにしよう。

「大変良くできました!」
「良くできましたぁぁあぁあ!!」

山田先生は嬉しそうににっこり笑い、土井先生は泣き叫んでいる。まあ、その気持ちわからんでもないが……。は組の子達も「そんなに?泣くほど?」って引いてますから。

「前回の戦で敗れた大間賀時曲時は、黄昏甚兵衛と密約を交わしたに違いない。」
『園田村をはじめオーマガトキの村々はとっくにタソガレドキのものになっていたと言うわけですね。』
「全うな年貢では取れない所まで搾り取るつもりですな。」

やることが汚いね。武士のくせに。内心むっと怒るが今は戦国時代。これが世の常と言うところか。

と言うかいつまで泣いてるんです、土井先生。俺はまだ隣で嬉しそうに泣いている土井先生の背中をさする。そんなに嬉しかったのか。でも、滅多にないことだとしても泣きすぎでしょう。俺はくすくすと笑みが溢れた。

「喜三太を助けに来て大変な陰謀に出くわしてしまった。」
「それにしても自分の領民を騙して儲けようなんて。」
「しんべヱに似てるくせになんて酷い殿様なんだ!」

元々の性格なんだろうなぁ。だから領民からも慕われないし、人望も無い。知恵も無いから戦にも負ける。おやまあ、最悪な城主だな。俺の主であった竹成様を一度見習いなさいと説教したいくらいである。

「因みに………。」

今もまだ、大間賀時曲時の顔に変装している三郎が後ろを向いて自分の顔をささっと触れた。

「黄昏甚兵衛はこんな顔。」
「「「黄昏甚兵衛ぇ変な顔〜〜」」」

みんながみんな口を揃えて言うもんだから余計に黄昏甚兵衛の顔が変に見えてしまった。……そうですね、は組の仰る通りです。


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