雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 戦の実態-01-


じくじくと痛む腹の傷をぎゅっと抑えながら、木の枝から枝へと飛び移る。深手ではないが痛いものは痛い。我慢しながら、しばらくそのまま走り続ければ見知った気配を感じ、安心で頬が緩んだ。

『土井先生、みんなっ!!』

ざっと彼らの前に姿を表せば、乱太郎達は俺の突然の登場に驚きわーっと叫び声をあげた。が、すぐに表情を一変させた。

「「「あー、蓮夜さんじゃないですかぁ!」」」
『ふふ、みんな無事そうでよかった。』

一呼吸おいてからのお馴染みの挨拶に俺も笑って返す。先程まで緊迫した戦いの中にいたからこそ、彼らの暖かいこの雰囲気といつも通りの反応に俺はこの上なく癒された。

「と言うより蓮夜、ボロボロじゃないか!手当てするからこっちに来て!」

俺の風貌を見た伊作が慌てて手を引いて、俺を少し平坦な地面に座らせた。そしてテキパキと手当てをしていく。さすが保健委員長、作業が早い。

「だいたいはかすり傷や打撲だね。幸い、この刺傷も内臓は傷つけてないみたいだし。」
『この程度で済んだのは、俺の努力の賜物かな?』
「もう!そういう問題じゃないでしょ。」

冗談を言いながらくすくす笑えば伊作はぷりぷり怒りながらも、俺が大怪我をしていなかったことに少くなくとも安堵してくれたらしい。呆れたように笑いながら良かった、と言ってくれた彼に心が暖かくなった。

「すまない。もう少し早く駆けつけるべきだった。」
『これくらい大したことないですよ。それに乱太郎やきり丸.しんべヱ.団蔵.金吾が無事だったのが何よりですから。』

手当てされている俺の傍らで土井先生が俺の傷を見て謝る。その眉は寄せられて八の字になってしまっていた。それに乱太郎達は俺の回りで心配そうに伊作の手当てをじっと見守ってる。……そんな顔させるつもりじゃ無かったのになぁ。
大丈夫だと、軽く笑い飛ばせば土井先生は少しだけ困ったように笑い返した。

手当てが終わり俺が立ち上がった瞬間、足元にひしっとまとわりついてきた乱太郎達に俺は首を傾げる。

『みんな、どうした?』
「「「……僕たちのせいで怪我させてごめんなさーい!」」」
『心配かけてすまなかった。でもこの怪我は自分の失態だから、みんなのせいじゃないさ。』

ぐずっと泣きかけている彼らに俺は逆に申し訳なくなってしまった。この子達を泣かせるなんて、俺最低だな。やばい、傷よりも心が痛くなってくる。
ぽんぽんっと乱太郎達の頭を撫でれば、彼らはうるうると涙をためた目でこちらを見上げてきた。うむ、その顔は反則だな。ぎゅっとしたくなるじゃないか。

『ほら、みんな。泣き止んで泣き止んで〜!!』

全員に被さるようにぎゅと抱きつけば、彼らはまだぐずっと泣きながらも笑ってくれた。

『さて、オーマガ組との合流場所に急ごうか。』



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