雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 強者との邂逅-04-


「"待たせたね蓮夜。あの忍は私に任せなさい。"」
『"お願いします。"』

土井先生は俺に矢羽根を飛ばし、乱太郎達の元へと行ったタソガレドキ忍者を追っていった。ああ、彼が来ただけでこんなにも落ち着くなんて。敵がまだ俺の目の前で殺気を飛ばして立っていると言うのに。よし、頑張れる。
そう思えたのも束の間。

「へぇ。陣内が手こずるなんて珍しいね。」

突如、俺と戦っていた忍の隣に現れたのは彼らの忍組頭・雑渡昆奈門だった。彼はさっき大間賀時曲時とタソガレドキの陣に向かってたはずなのに。なんでここに……?
ぎろっと殺気の混じった視線を彼に向けられ俺は一歩引き下がりそうになるが、なんとかその場に踏みとどまった。ああもう、怖い。伊作には負けるけど今日の俺もなかなかに不運だ。敵わない。逃げ出したい。湧き出す感情を無視し俺は雑渡昆奈門を見据える。

突如、ふっと俺の視界から消えた彼に俺はすぐに反応した。……来るっ!
その瞬間、俺は苦無を構え真横から飛んできた手裏剣を叩き落とした。息つく間もなく繰り出された蹴りを避ければ、次は忍刀で斬りかかってきた。なんとか攻撃を受け止め、かわしながら反撃の機会を伺う。

激しい攻防の末、キィンと俺の持っていた苦無いが弾かれた。そして同時に回し蹴りをもろに受ける。俺は思いっきり木に叩きつけられ、首元に刀が突きつけられた。ったく、反則並みに強すぎだよ。

「残念、私の勝ちだね。」

雑渡昆奈門は、木にもたれ俯く俺に向けて勝ち誇った笑みを向けた。だが、俺はゆっくり顔を上げてにやりと笑ってやる。

『ふふ、それはどうですかね。』

密かに手に持って構えていた棒手裏剣が彼の胸の前で小さく音を鳴らした。
俺が雑渡昆奈門を刺す前に彼は後ろへと飛び退きいたが、俺は木を蹴って勢いよく彼の懐に突っ込んだ。腰に差した忍刀を抜刀し、その勢いを利用し斬りかかろうとしたが、今まで控えていた"陣内"と呼ばれていた忍が俺に向けて暗器を飛ばしてきた。

『ちっ………!』

舌打ちをして何とか暗器全てを空中で避ければ、体制を崩して地面に倒れこんでしまう。急いで立ち上がって忍刀を構えれば、雑渡昆奈門はにやにやと笑っていた。どういうことだ。何故かかってこない。今の一瞬は、俺を殺す絶好の機会だったのに。

「ふぅん、君強いね。名は何て言うの?」
『…………、…はい?』

先程までの俺に向けていた殺気は何処に行ったのか。今、彼は至極楽しそうに笑っている。何でだ。因みに、隣にいる"陣内"さんは少し呆れ顔だ。予想するに恐らくいつも彼に振り回されているのだろう。

「だからさ、名前教えてよ。」
『……自ら情報を漏らすようなことはしませんよ。』

何で教えなきゃいけないのと言う雰囲気を出せば彼はむうっと膨れた。いやいや、良い歳こいた貴方がやっても全然可愛くありませんけどね。

「だって私の名前は知っているだろう?」
『まあ、有名ですから。』
「だったら教えてよ。」

なに、この子供みたいな駄々っ子は。噂に聞いてる雑渡昆奈門ってこんな感じだったけ。いや、もっと鬼神みたいな、恐ろしい忍だったはずなんだが。確かに、確かに最初は恐ろしいと思ったけれど差が激しすぎやしないか。
どうするかな、と俺は悩むがふっと良いことを思いついた。

『なら、今は"鴉"とでも名乗っておきます。』

彼らにもう戦闘の意思がないことを察し、俺はその場から姿を消した。




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