雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 強者との邂逅-03-


『土井先生を探してきてくれ。』

待機させていた朱華を呼ぶ。すぐに現れてくれるあたり、流石優秀な俺の家族だ。今頃、必死になって彼らを探しているだろう土井先生を探すように言えば、朱華は軽く鳴いてあっという間に飛び立ってくれた。

…さてと、一戦交えますか。
覚悟を決めた俺は、乱太郎達を追うタソガレドキ忍者に向けて思いっきり苦無を投げつけた。しかし、それはあっさりと避けられてしまう。まあ、当たり前なんだけど。
っと言うか自ら喧嘩売るのも久しぶりだ。こんなことがなければタソガレドキ忍者に対して喧嘩なんて絶対売らないんだが事態が事態だしね。因みに、己の実力ぐらいわかっているつもりだよ。

『ねぇ、お兄さん方。あんな餓鬼共じゃなくて俺の相手をしてよ。』

ふっと挑発的に笑えば彼らは2人同時に勢いよくこちらに向かってくる。さっさと俺を倒して追いかけようってか。だが、お生憎様。

『そう簡単に殺られるタマじゃないよ。』
可愛い彼らのためなら尚更ね。

1人が苦無で俺に真っ正面から挑んできて、もう1人は隙を狙って手裏剣や暗器を打ってくる。感嘆するほどのコンビネーションだ。ああもう。あり得ないぐらいにやりにくいったらない。

目の前の苦無を受け止めたかと思えば後方から飛んでくる手裏剣。急いで苦無を力任せに押し返し体をくるりと捻れば、ほんの少し脇腹にかすって木に刺さった。体制が崩れたところを、思いっきり蹴りあげられる。だが、蹴られる瞬間に自ら少し後ろに飛び衝撃を和らげた。けほっと軽く咳き込みながらも空中で体制を建て直し、後ろにある木をバネに相手の元へとまた飛び込んだ。
勝たなくていい。ただ乱太郎達が逃げ切るまでこいつらをここに留まらせておけばいいんだ。
通常よりこじんまりとした焙烙火矢を2つ懐から取り出し火をつけそれぞれに投げつけた。

「ちっ、避けろ!」
「っ!!」

俺が奴らのすぐ近くにいるにも関わらず焙烙火矢を投げたことに少なからず驚いたのか、一瞬彼らに焦りが見えた。
どぉんと、音がしたあとすぐ俺は立て続けに棒手裏剣を打つ。だが煙が引いたそこには人は転がってなくて。逃した。なんて思う暇もなく、真上に現れた気配に素早く反応して降り下ろされた忍刀を受け止めた。だが、真上の気配に気をとられ過ぎて油断した。真横から不意に突き出された刀に気づくのが遅れ、避けようとしたが腹に少し刀が刺さる。目潰しを相手の顔へ投げつければ、相手は飛び退き俺と距離をとった。

……しくじったなぁ。幸い傷は深くないけれど。ああ、乱太郎達は今どこにいるのだろうか。無事なのかな。

刺された腹を庇いながら、戦っていれば不意に遠くの方から鳴き声が聞こえた。よく聞きなれたその鳴き声に俺の口角があがる。しかし、タソガレドキの2人もそれに気づいたのか目で合図を交わした。
1人が俺の元から離れ、乱太郎達が逃げた方へと走り出した。まずい。こちらの援軍がくる前に彼らを追いかけるつもりか。邪魔をしに行こうにも目の前の相手がそれを遮って思うように動けない。

とその瞬間、ぶわっと強い風と共に、俺らの前に現れたのは朱華に探しに行って貰った彼だった。
……あぁもう。
待ちくたびれましたよ、土井先生。



prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -