雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 強者との邂逅-01-


学園の様子をうかがっていた曲者を気づかれないようにそっと追っていけば曲者はタソガレドキ領の方へと入っていった。

やはりあれはタソガレドキ忍者だったか。このまま奴について行けば、何か分かるだろうか。しかし、このまま何の策も練らず深追いしすぎてはこちらが危険にさらされる。それに相手はタソガレドキ忍者隊で、その頂点に立つ忍組頭.雑渡昆奈門は恐るべき実力者だ。
俺との力の差など歴然。

俺は、タソガレドキの陣へと入っていった忍を追うのを止め、変わり衣の術で忍装束から着替える。そして城下へと足を進めた。
ふと思い出したのはタソガレ組で此方に来ているは組の子達。
……今会うのは不味いかもな。
監視されていたのなら少なくともは組の子達は顔が割れている可能性も高い。接触すれば、忍務のリスクも高くなる。気を付けなきゃね。

細心の注意を払いながら街で情報を少しづつ仕入れていく。主に女性を対象に。だってね、女ってすごいんだよ。どこから仕入れてくるのそんな話、 みたいな裏の話だってたまに知ってるからさ。
"街の女は噂好き"ってな。
そう言えば俺が"あたし"だった平成でも女は凄かったよな。女の情報網を甘く見てたら泣くことになるって一部の男が打ちひしがれたこともあった。
女同士の情報の交換はいつの時代でも当たり前ってことだね。

それにしても、

『本当に戦の最中かよ。』
「君もそう思うかい?」

あまりにものんびりした空気に、俺は無意識に呟いた。そんな俺の独り言に不意に後ろから返事が返ってきたことに驚き振り向けば、そこにいたのは利吉さんだった。

『利吉さん、何故ここに?』
「とある人からの依頼でね。そう言う蓮夜くんは何故?」
『まあ、話せば長くなるんですけどね。』

あえて人通りの多い場所を選んで歩きながら、矢羽根で今までの事の経緯を説明する。人通りの少ない所にいればかえって目立つし、矢羽根なら会話を聞かれる心配もないからね。
すべて話終えれば利吉さんは顎に手を添えて少し何かを考えていた。

「…庄左ヱ門達は今この辺りに?」
『いると思いますよ。……ねえ、利吉さん。もしかして利害が一致しそうですか?』

その問いに彼はにこりと笑って肯定した。まさか利吉さんが喜三太救出に参加してくれるなんて。予想外の嬉しい話だ。

「私は庄左ヱ門達を探して父上の元に行ってみるよ。あ、それから1つ、オーマガトキ軍の方で面白い噂話を聞いたんだが……。」

別れ際に聞いた利吉さんの話はとても興味深いものだった。
俺は街を離れ森に入りまたいつもの忍装束へと着替えてタソガレドキの陣の方へと向かった。利吉さんの話が真実か否か確かめるために。



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