雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 園田村からの相談-03-


「黄昏甚兵衛は評判の悪い大名じゃ。制札を餌に次々と要求を出してくるかもしれん。」

黄昏甚兵衛ねえ……。
彼は戦好きでササガタケは正反対だったから、竹成様自身はあまり黄昏甚兵衛を良くは思っていなかったな。まあ、それは俺も同じだが。

『しかし、この事がオーマガトキ側にばれると厄介なことになりますね。』

裏切り者扱いされてしまい、それこそ村の存亡が危うくなってしまう。

「戦線は一月前の激突以来タソガレドキ軍の圧倒的優位のまま、不思議なにらみ合いが続いていますな。」
「不思議なにらみ合い?」

山田先生の言葉に団蔵が反応すれば、庄左衛門以外のは組の子達が凄い顔でにらみ合いを始める。なんでだ。でも、それがどうにも可笑しくて。可愛くて。あ、駄目だ。我慢できねーよ。

『く、はははは!』
「フシギなニラミ合いをするなぁ!」

山田先生と土井先生が呆れる中、俺と団蔵と庄左ヱ門は吹き出した。さっきからずっと笑うのを堪えてたんだけどね、どうにも俺は我慢できなかったらしい。だって、ねえ。

「とっくに勝負がついているはずなのに、つかないのが不思議だと言っとるんだ。蓮夜、お前も笑ってんと何か言わんか。」
『だって…、面白すぎるでしょう!』

まだクスクス笑っていれば、山田先生にため息を吐かれた。ちょっと酷い。

「話が脱線して大変ですな。」
「「「困ったもんです〜!!」」」
「「お前らが言うなー!!」」

は組の全員が口を揃えて言うもんだから俺はもう涙を流しながらくすくす笑う。その俺の隣では山田先生と土井先生が遂に2人揃ってズデンと転けていた。苦労しますねえ、先生方。でもそんな光景が俺は好きなんだけど。

「そこでこの戦、どう決着するか両軍の印を取る必要がある!」

こほん、と学園長が咳払いをして話を戻しせば乱太郎が勢いよく手を挙げて質問をした。

「印を取るってなんですか?」
「…教えたハズだぁ!!」
「兵力.兵站.戦術などを詳しく調べることだよ。」
「さっすが庄左ヱ門。1年は組の学級委員長!」

くわっと土井先生が怒ろうとしたが、間髪入れずに庄左ヱ門が素早く口を開いた。そのことに土井先生はうるうると目尻に涙を溜めて感動をあらわにした。しっかし、流石は組の頭脳。ちゃんと覚えてるなんて偉い。俺が庄左ヱ門の頭をぽんぽん撫でれば、庄左ヱ門は嬉しそうにはにかんだ。

さて、"印を取る"と言う意味を知った乱太郎達は「あ、だったら……。」とこしょこしょと話し合いをはじめてしまった。ううーん。嫌な予感がするのは俺だけか?


「「「僕達が印を取りに行ってきまーす!」」」
「うむ、許可する。」


そのやり取りに俺と山田先生と土井先生は思いっきり転けた。

『嫌な予感がすると思った。』
「行きたがると思った。」
「許可すると思った。」
『「「……学園長〜〜っ!」」』

学園長に迫り大声で怒鳴ってみても、学園長は寝たフリをして俺らの声を知らんぷり。ああ、もう。土井先生じゃないけど胃が痛いって。



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