雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 園田村からの相談-02-


学園長の庵の天井裏で待機をしている俺は、下で行われている漫才みたいな会話に笑いそうになる。だが、今の俺の状況を思い出して必死に笑いをこらえた。

さて、学園にいらしているお客人は園田村の乙名の手潟潔斎さんで、その園田村はオーマガトキ領にある村だ。
オーマガトキ城はタソガレドキ城と戦をしているが、この戦に負けてしまうとタソガレドキ軍が雪崩れ込んでくる。そして村を制圧するために食料や家財を奪い村を焼き払ってしまう。

俺が思うにタソガレドキ軍にオーマガトキ軍は敵わないと思う。兵力にも諜報にも力を入れているタソガレドキ軍を倒すのは今のオーマガトキには困難。まあ、手潟さんもそれは大いにわかっているようで、「はっきり言ってオーマガトキに勝目はない!!」と言い切った。本当に清々しいほどキッパリと。

「負けた時のために密かに敵に通じてタソガレドキ城主.黄昏甚兵衛から"かばいの制札"を貰おうと村中の金を集めました。」
「カバの警察を貰う??」

話を聞いていた団蔵は頭の上に疑問符を浮かべた。しかし、何でそうなるだ阿呆。そう聞き取れる耳はある意味すごいと思うぞ、俺は。

「かばいの制札!!放火をするな。荒らすな。軍勢による乱暴を禁止する禁制のことだ。」

そして怒りながら訂正する土井先生は胃炎が悪化しなければいいけれど。

「それで手潟さんは制札を貰えたんですか?」
「いえ、言われた通りの金品を支払いましたが制札は貰えず、くわえて馬の飼料の大豆まで要求される始末です。」
「それで困り果てた手潟さんは学園長先生に相談にこられたの。」

この戦乱の世ではよく聞く話だが、やはりいつ聞いても胸糞悪い話にはかわりない。
だが、当の学園長はこくりこくりと舟をこいでいた。鼻提灯まで作って。全くなにやってんだか…。すたんと天井から降り、学園長の目の前でぱんっと一回手を思いっきり叩いた。

「うおっ!」
『学園長先生、まだお話の途中ですよ。』
「おお、そうじゃたそうじゃた。」

手を叩いた勢いで学園長の鼻提灯は割れてそれと同時に目を覚ました。学園長が起きたところで話の邪魔にならないよう、俺は土井先生や山田先生の隣に座る。

「それにしても蓮夜さん、いつから話を聞いてたんですか?」
「うん、全然わからなかったー!」
『最初から聞いてたよ。ずっとあそこでね。』

庄左ヱ門と団蔵が口にした問いに、俺はくすっと笑って天井裏を指差す。するとは組の子達は「ほえ〜」と感嘆の声をあげた。うん、照れる。



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