知らず知らずの突然変異


気がついたら、俺は辺り一面うっそうとした木々に囲まれた

大自然の中に、一人ポツンと裸足で立っていた。




驚いたよそりゃあ、

まったく頭の中で整理しきれなくってさ、

いわゆる此処は"あの世"ってやつなのか?


とか思ってたんだけど、


なんか違和感を感じで足元を見てみた。



そしたら変なことに、妙に地面が近くって

そんでもって、白くて小さな足が目に入った。




言わなくても分かるだろうけど、


俺の足はそんなに白いわけでもなかったし、いや、黒いわけでもなかったけども


とりあえず、こんなに小さいことはありえなかった。



男だし。第一にもう18だったし。



驚いたことに、腕や、手、体もどうやら縮んでいるようで



おい、それなんていう名探偵だとか思ったけど


とりあえず確認したくて、川でも湖でも何でもいいから

とりあえず自分の今の姿を確認できるものを求めて



デコボコな岩や土なんて気にしてられるわけもなく、


裸足のまま走り出した。







いくらか走ると、耳に水の流れる音がかすかに聞こえて

何とか水場を発見できた。




穏やかな流れの小川だった。




それから、その川に映ったのは





小さな子供だった。






『え・・・・』




妙にかすれた声が口から漏れて

のどがカスッカスに渇いていることに、その時はじめて気がついた。



無我夢中で、その小川に顔を突っ込んで水を飲んだ。




のどが潤って、少し冷静になって


もう一度水面に映るおそらく俺。を見つめる。



ところどころ、砂にまみれて汚れた衣服に顔。



足は、もとからか、裸足で走ってたせいか切り傷や擦り傷だらけだった。



ていうか、お世辞にも綺麗とはいえない

ただの布ッ切れのような、俺が身にまとっているその衣服は

着物だった。



分からないことだらけだったけども、


とりあえず、顔。



大きな目。ソレも、ほんのりタレ目。


スッと通った鼻筋に、形の良い眉と唇。



髪こそ伸びきってボサボサであったものの。


幼さはあるのだが相変わらずの美丈夫だったことに少し安心。



幼いせいか、女の子に見えないことも無い。







とりあえず、自分を確認してから


どうしたものか・・・と再び思案する。




まず、なぜ俺は生きているのか。

そして、どうして幼い姿なのか。


なぜ着物を着ているのか。


此処はどこだ。



考え出せばきりが無いほどに分からないことだらけで


頭がパンクしそうになった。





取り合えずだ、まずすべきことはこの森から抜け出すことだろう。



状況を把握するにも、人も何もないこんな森の中じゃあ

分かるものも分からない。



それに、森の中なんて大自然。

暗くなれば危険なことは火を見るように明らかだ。



今の時代錯誤なこの着物姿というのも

少し人前に出ることに気が引けたが。

そんなことを言っている場合でもない。




『とりあえずは、この川沿いに下っていくか・・・』




人のいる場所まで、ここからどれほどの距離があるのかなんて
皆目検討もつかない。


今の小さな体では、見渡す限りのものが大抵は自分の背丈より大きかった。


遠く先のほうなんて木、木、木。



ひたすらに木しか見えなかった。



ただ、せめて暗くなる前には人に出会えればいいと思った。


暗くなってしまっては明かりの無いこの森で歩き回るのは不可能だ。








どうか、どうか。生き延びれますように。






一度死んだはずの俺がこんなことを思うのは少しおかしいなと思った。



とにかく歩け。ただひたすらに。



男だろ。




自分にそう言い聞かせて、少し痛む足でひたすら地面を蹴った。


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