03


「アッハッハッハッハ!!ソラお前不器用だなぁ〜。」

『うっ、うるさいなぁっ!こんなのできなくったって!。』


「なぁ〜に言ってんだ。
掃除くらいできなきゃ、お嫁にもいけねぇーぞ。」


『フンッ!いかないからいいもん!
アロンさんとずっと一緒にいるもんバカ!!』


「おい、バカとはなんだバカとは!・・・
でもずっと一緒とか言われると照れんなぁ〜。」




「なんかあの二人喧嘩してんのかしてねぇのかわかんねぇよ・・・。」







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「おい、ソラお前掃除うまくなったなぁ〜
・・・部屋がピカピカだ。」


『そうでしょ!?私掃除だけは得意なんだ!!』


「?おいおい、一年前といってることが違ぇだろ?。」



『いっ、一年たったら、なんとなくできるようになったの!!。』



「こんなこといってっけどアロンさん。ソラのやつ
昔アロンさんに掃除が下手だって笑われてから
悔しくって毎日倉庫掃除して練習してたんだぜ?。」


『バッ、バカー!!秘密だって言ったじゃん!!』


「アッハッハッハッハッハ!!お前も可愛いところあるな!!。」







― いつも陽気に笑うその姿が、麦わら帽子の海賊と重なった ―






「お前、仲間になれ!!。」








Contradiction
    ― 矛盾 ―







「ちょ、ちょっとルフィ、あんた何言ってんの!?」



あまりの驚きに声を発せないでいるソラの代わりに
大声を上げたのはナミだった。



「そうだぞルフィ!お前分かってんのか?こいつは海兵で!」



「でも、もと だろ?。」


「そっ、そりゃそうだけどよ・・・。」



どうしたものかと、ウソップは頭をかかえる。


ルフィが頑固者であることは
もはやクルー全員が知っていることだった。


それゆえに、みな言葉につまり、ただ顔をしかめる。




『―― ふざけるなよ・・・・・』




静まりかえった部屋に
ポツリと小さくもらしたソラの声が嫌に響いた。



『それでも君は一味の頭かい?
得体の知れない人間など危険因子にすぎないよ。
        すぐに殺してしまえばいい。』



静かに怒りを募らせるソラにナミは顔をゆがませる。


彼女の言葉はまるで他人事だ。

今まさに死のせとぎわにいる者の言う言葉ではない。



「俺がお前の言うことを聞く義理はねぇ。
    それに、ボロボロの体したお前なんかに
        俺たちがやられるわけねぇだろ!」





堂々と言ってのけるルフィに、

ソラは何もできない悔しさからか歯を噛みしめる



― なんで私なんかつれてきた!
   お前なんか殺すかもしれないんだぞ!! ―



― バーカ、俺たちがテメェみてーなボロボロの餓鬼に
            負けるわけねぇだろ?。 ―







また、重なる。





『うるさい、うるさい!!何でお前なんかがっ!!』







― あの人と同じことを言う? ―








頭に血の上ったソラは、

自分がぶつかったせいで散らばったであろう
医療器具の中からメスをつかみ、

傷だらけのはずの体でルフィに向かって走り出す。




「ルフィッ!!」





クルーたちは突然のことにソラをとめる暇もなく
ルフィの名前を呼ぶ。








パシッ










少し乾いた音が部屋にこだまする。



ルフィを切りつけるためにメスを握ったソラの手は
ルフィによってつかまれていた。



その光景にクルーはホッと息をつく。

しかし、ソラはルフィを睨むことをやめなかった。
まるで毛を逆立てて威嚇する野良猫のようだ。



「お前、何そんなに怒ってんだ?。」



ルフィは、ソラの目に映る激しい怒りの感情に首をかしげる。

しかしソラは口を開かない。



ただ「気に食わない」と、彼女の瞳は語っていた。




― なぜこんな奴とあの人が重なる?




瞬間、ツキリと腹部をおそった激しい痛みに

ソラは声を上げる。



『グ、ァッ・・・』



ルフィに手首をつかまれたまま、ソラは力なく膝をついた。


痛む腹部に手をやればヌルリとした生暖かい感覚が広がる。





血だ





どうやら傷口が開いたらしい。



白かった包帯はあっという間に赤色へと染まる。



「なっ、お前大丈夫か!?。」



ルフィはソラの手首をつかんだまま目を見開いた。




『う・・・るさぃ・・・・。』




とてもか細い声をしぼりだすソラに
チョッパーもあせりの色をうかべる。




「大変だ!傷口が開いた、すぐふさがなきゃっ!!。」




その声を境に、ソラの意識はまたプツリと途切れた。








 * * * *






「仲間にするかはおいといて、
この海の中に放り出すわけにもいかねぇしなぁ・・・。」





ふと、そんな声が聞こえた。




意識が戻ってきたのだろうか。

目が開かず、
暗闇の中に聞こえてくる声たちにソラは耳を傾けた。





「そうね。とりあえず次の島まではのせておくしかないわ。」




― 早く海へと投げ捨ててしまえばいいのに ―





この海賊たちはまるで理解できない。



意識を失う前とは打って変わって、
冷静にそんなことを考える。



酷く心が静かだった。


あんなにも興奮していた自分が嘘のようだった。




「オイッ!俺はコイツを仲間にするんだぞ!
         次の島でもおろさねぇ!!。」



ひときわ大きな声が聞こえた。

今までどこか遠くに聞こえていたはずの声たちとは違い、



近い。




近くで声がした。


ゆっくりとまぶたを開けてみる。


視界の端に赤色が映ったことにソラは溜息をつきたくなった。




「お前なぁ〜さっきまで何があったと思ってるんだよ。
あんなあぶねぇヤツどう考えてもやめた方がいいぜ?」




「お!起きたか?。」


「って、聞いてねぇし・・・」




視界の端に映っていたはずの赤色は
ソラの目の前へとやってきた。


彼の顔がひょこりと現れる。



赤い服に麦わら帽子。



ふいに、太陽の匂いがソラの鼻をくすぐった。





『・・・・君は、時々あの人と重なるんだ・・・・・。』





ルフィの目をみて、ソラはかすれた声でポツリとつぶやいた。



その声に、暗闇の中聞こえてきた二つの声が驚く。




「えっ、」



「お、起きたのか?!。」





戸惑い、慌てた焦りを含んだ声色、


確か、ナミとウソップといったか・・・・




頭の端にそんなことを思いつつも、ソラは話を続けた。



『・・・・もういないと分かっているのに
       心のどこかでそれを喜んだ自分がいた。』



ナミ、ウソップ、ルフィはただ黙ってソラの声に耳を傾ける。



『あの人と君を重ねて、喜ぶ自分に腹が立ったんだ。
   ずっと心のどこかであの人の代わりを探していて、
   のうのうと生きようとする自分が酷く滑稽に見えたよ。』



『どれだけ希望をなくしても、
    やはり自分で死を選ぶことができなかったらしい』



と、ソラは自嘲の笑みをもらす。



『今までのは僕のただの八つ当たりだ。
     醜い・・・他人のせいにした、子供みたいだ。』



ナミとウソップは、ソラの言葉に唖然と立ちつくした。

口を半開きのまま、ピクリとも動かなかった。

掠れた、絞るように出される声が
嫌でも耳に入った。



『自分で死を選ぶことはできないから、
     君たちに僕を殺してほしかったんだ・・・。』



「何言ってんだ、

  お前はもう俺たちの仲間だ!殺すわけねぇだろ!。」



ルフィは不機嫌そうに少し眉を寄せ、そう言った。

ソラは目を見開く。


この期に及んでも彼はまだそんなことを言うのか
そう思ってしまったからだ。


自分は先ほど本気で彼を、


ルフィを刺そうとしたはずなのに・・・


やはり、彼の感情は分かりやすいようで読めなかった。



『ははっ、冗談・・・・』

「冗談じゃねぇ!!。」



さらに眉間にシワをよせるルフィの目を
ソラはじっと見つめる。







綺麗な黒だ。





自分のような深い、濁った闇の色ではない。

言うなれば夜空のような色



黒の中にも星のような輝きが彼にはあった。



夜空のようだなんて月並みの言葉に、ソラは内心苦笑する。



― なんて安っぽい言葉だ ―



だが、それ以外にソラには言い表せなかったのだ。




『僕は・・・君の仲間になりたくない。なれない・・・。』



そのソラの返事にルフィは口を開く。



「そんなことねぇ」だとか「もうお前は仲間だ」とか、
「俺が決めたんだ!!」とか、



たくさんの言葉をソラへと向ける。



ソラは苦笑いを浮かべるだけだった


その光景にナミもウソップも、
内心はまだ驚きつつも溜息をついた





ルフィの言葉にソラはうなずかない。



嫌いなわけではない。





綺麗な彼らに、薄汚れた自分を見られるのが嫌だとか

また失うのが怖いだとか

そんなことを彼らに打ち明けられるわけもなかった。










― 「死にたい」 と私は言う

       「死にたくない」と僕は言う




「生きてはいけない」と私は言う

         「生きたい」と僕は言う





それは矛盾だと、誰かが笑った気がした。












To be continude・・・


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