01


青い青い海“偉大なる航路”


その青の上に、一隻の船が浮かんでいた。

船首にはどこか愛敬のある羊の顔

船の帆には麦藁帽子をかぶったジョリー・ロジャーが描かれている

船首と同じく、愛敬のあるマークではあるが

その船は紛れも無く海賊船だった。





Distrust
 ― 疑惑 ―







「あ゛ぁ〜ひまだなぁ〜オイ、ウソップ〜魚釣れねぇーぞ。」



帆に描かれたマークと同じ、赤いリボンの麦藁帽子をかぶった青年

モンキー・D・ルフィは船から釣り糸を垂らし、長鼻の青年
ウソップに文句をこぼす。



「んなこと俺に言ったってしかたねぇだろ・・・。」



ウソップはあきれた様にそう返すが、

やはり彼もまた退屈であったのは確かだった。



「魚・・・いねぇのかなぁ・・・。」



少し悲しそうに眉を八の字にさせているトナカイである
トニートニー・チョッパーも
釣り糸にひきがまったく無いことに落ち込んでいた。



どこかこの船になじんだこの光景に、
これはいつものことなのだと思わされる。



「オイ、ナミ!次の島はまだなのか!。」



半ば八つ当たりぎみに叫ぶルフィに

本を読んでいた航海士ナミは視線をルフィに向ける。



「気候はまぁまぁ安定してるけど、コレが島の気候海域とは
          言えないわね。まだなんじゃない?。」



それだけ言うと、再び手にしている本へと視線を戻すナミに
ルフィは露骨に不満気な表情を見せた。



「俺は暇なんだよ!ヒマだ!ヒマ!!。」



「そんなの私に言ったってしかたないでしょ。」



ナミはめんどくさそうに先ほどのウソップと同じセリフを吐く


今度は視線をルフィに向けることも無かった。


彼の我がままもまた、この船の日常である。



「あぁ〜ヒマだなぁ・・・島もまだみてぇだし・・・。」



「あぁ、まったくだ。ヒマだなぁ〜・・・チョッパー?。」



先ほどからまったく口を開かないチョッパーを
不思議に思ったウソップは、彼へと視線を向ける




「オイ、どうしたんだよ・・・?。」




チョッパーは、ある一点をただじーっと見ていた。




「海に・・・何か、浮かんでるんだ・・・。」




「どこだ?。」



ウソップは、チョッパーの視線の先をたどり
同じ一点を見つめる。




「お、本当だ・・・小船か?。」




茶色く、海をプカプカと浮かぶソレは確かに小船に見えた。



「でも変じゃない?この“偉大なる航路”に
               小船一隻なんて・・・。」



いつの間にいたのか、
先ほどまでの話を聞いていたらしいナミは、
ウソップ達と同じ方向へと目を向けながら言った。



「まぁ、確かにな・・・人も乗ってねぇ見てーだ。」



まだいくらか距離があり、遠目ではあるが
人の座っている姿がないのは確かだった。




「何だ何だ?。」




先ほどまでヒマだとだれていたルフィは

ウソップ、チョッパー、ナミが話し込んでいることに気づき、
へばっていた体をおこした。



「ほら、あそこに小船みてぇなのが見えるだろ?。」



ウソップが指を指す方向に目を向けたルフィは



「おぉ、船があるな。」



とうなずくだけだった。

どうやら何がおかしいのか彼には理解できていないらしい。



「馬鹿、おかしいと思わねぇか?この“偉大なる航路”に
                  小船が一隻だぞ?。」



「そうよ。海王類にでも出くわしたら
              逃げることすら出来ないわ。」



「んん、確かにそうだな?何だ、アレ?。」



「だからそれを今話してたんだよ!!。」



やっと問題点を理解したのか、首をかしげてみせるルフィに
ウソップは軽くチョップを繰り出した。



「よし!じゃ俺が見に行こう!!。」



そう言って急に立ち上がるルフィに
ウソップ、ナミ、チョッパーは驚いた表情を浮かべる。



「やっ、やめとけって!何かあったらどうすんだよ!。」



「どうせヒマなんだし、いいじゃん。」



「オ、オレもやめといた方がいいと思うぞ!!
                 あの船怪しいし。」



「ま、大丈夫だろ。」



「行ったってどうせ何もないわよ。時間の無駄でしょ。」



「もしかしたらお宝積んでるかもしれねぇぞ!?。」



「ルフィ!行ってきなさい!!」



「「オイッ!!」」















それからルフィは、
小船へと視線を向け、狙いを定めた。



「よし、行ってくるぞ!!。」



「たのむから、厄介事は持ち込むなよ!!。」



ウソップの忠告をちゃんと聞いているのか、
ルフィはニカリと嬉しそうに笑みをうかべた。

どうやらヒマだった彼にとって、
これは嬉しい出来事のようだ。

悪魔の実の能力者である彼は、船へと手を伸ばした。


























「よっ、と」



ぶじ船におりたルフィは、その光景を目にして目を見開いた。




「おっ、おい、大丈夫かお前!?」




おそらくルフィと同じくらいであろう年の人間が
血まみれで横たわっていたのだ。



「しっかりしろ、オイッ!!」



慌てたルフィは、その人物を抱きかかえると
自分の船へと再び手を伸ばした。
















______






「大丈夫かなルフィ・・・。」



「大丈夫よ、もし何かあってルフィだし。」



心配そうにつぶやくチョッパーにナミはケロリと答える。

しかし、遠目に見えるルフィのの動きの変化に
ウソップは目をこらす。



「オイ、何かあったみてぇーだぞ。
           ルフィのヤツ慌ててるみてーだ。」



「あれ?もう帰ってくるわ。」



のびてきたルフィの手を見てナミは首をかしげる。



「おぉい!大変だ!!人が血まみれだぞぉ!!。」



そう大声をあげて帰ってきたルフィに三人は目を丸くした。



「ちょ、ちょっとルフィ誰よそれ!。」



「わかんねぇけど、あの船に血まみれで倒れてて!!。」



ルフィの抱えた人物は酷く血を流し、ぐったりとしていた。



「いっ、医者ああぁぁぁぁ!!。」



「イヤ、お前だよ!!。」



ウソップに突っ込まれたチョッパーは少し落ち着きを取り戻し
人型になると慌ててケガ人を抱え、医務室へと入って行った。



「おいおい、なんの騒ぎだ?。」



甲板の異変に気づいたのか、
そう言ってキッチンから出てきたのはサンジだった。



「るっせぇなぁ・・・何だいったい・・・。」



今まで何処にいたのか、

ゾロもまた、眉間に深くシワを刻み
迷惑そうな表情を浮かべやってきた。



「って、おいルフィ
    お前血まみれじゃねぇか大丈夫かよ!!。」



ルフィの姿を見て驚いたサンジは慌てたようにかけよった。



「あぁ、コレ俺の血じゃねぇから・・・。」



ケロリと答えるルフィに安心したサンジは首をかしげた。



「何があったんだオイ?。」



しかし返事の無いルフィにサンジとゾロは顔を見合わせる。

彼はじっと医務室の方へと視線を向けているのだ。



「ナミさん何が「あの子・・・」・・・え?。」



真剣な表情を浮かべるナミにサンジは再び首をかしげる。



「あの子・・・海兵だわ・・・。」



「何っ!本当か?!。」



「見てなかったの!?あのマント、
             確かに海軍のものだったわ。」



「おい、どう言う事だよ?いいのか!?。」



何やら慌てたように話すウソップとナミに、
ただボーっとしているルフィ

まったく状況を飲み込めないゾロとサンジは眉を寄せた。



「オイ、ウソップ何があったんだ。」



「さっき、血まみれの子を船長さんが運んできたのよ。」



そうウソップの代わりに答えたのは
この船の考古学者であるロビンだった。



「ロビン!?お前いたのか?。」



「えぇ、ずっとそこにいたわ。」



どうやら今までの成り行きを
全て黙って見届けていたらしいロビンに
ウソップは呆れた表情を浮かべた。



「血まみれのって・・・何でルフィがそんなヤツを・・・。」



「いや、実はだな・・・ゴニョゴニョ・・・」















_______






バタン



「あっ!おいチョッパーアイツは?。」



数時間して、やっと医務室から出てきたチョッパーに
ルフィ達は詰め寄った。



「まだ意識はねぇけど、とりあえず大丈夫だ。」



大分疲れた様子のチョッパーに
ウソップはねぎらいの言葉をかける。



「それにしても、よく助かったわね。
 私の見てる限り物凄い血の量だったわ・・・。」



少し不思議そうなロビンの質問に、

チョッパーは顔を曇らせた。



「うん。それが、
 あの血は半分はアイツの血じゃなかったんだ。」



「「「「「 !? 」」」」」



その真実にルフィ以外は皆顔を曇らせた。



「おい、それってどういう・・・。」



「まぁ、何にせよ 只者じゃねぇのは確かだな・・・。」



あせったウソップの声にゾロは静に答えた。



「それに、ナミさんの話じゃ
     ソイツは海軍のヤツらしいじゃねぇか、

              助けてよかったのか?。」



「いくら海兵でも血まみれだったんだ!
               ほっとけねぇよ!!。」



サンジの疑問に、
チョッパーは少しなきそうになりながら叫んだ。



「そりゃそうだけどよ・・・。」



サンジは困ったように後ろ頭をかいた。



「早く目、覚まさねぇかな・・・アイツ・・・。」



そうつぶやき、医務室へと視線を向けるルフィの表情は
まるで感情が読めなかった。

クルー達は皆、ルフィの言葉に押し黙り
彼と同じく、医務室へと目を向けた。




 ガタリ ―



中から何かが動く音が微かに聞こえた。






















To be continued・・・


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