[ピーガガッ― あ、あーこちら土方、なにか不審なところはないか。どーぞ]
『こちら早瀬・・・。別になんもないですよ・・・今のところ。』
[・・・・・]
『・・・・』
[・・・・・]
『・・・・・どーぞ・・・・』
[そうか、分かった。 ブツッ―]
・・・・なんなんだ
【どーぞ】といわなければならないのですか・・・
なんかこっ恥ずかしかったので【どーぞ】といわなかったのだが
言わなければ返事は返ってこないようだ。
くそッ!なんてめんどくさい組織なんだ!!
とまぁ、そんなことはどうでも良くて・・・
作戦通り、今俺は人通りの少ない
というかまったくない道を一人で歩いている。
さっき不審なところはないか
なんて聞かれたが、人っ子一人いないのだ。
不審なところも何も、何もないのである。
これは本当に長期戦になるな・・・
まだ作戦をはじめて20分ほどしか経っていないが、
都合よく犯人が俺を攫うとも思えない。
おそらく今日中にはおわらんだろう・・・
そう思ってからふと、疑問が浮かび上がる。
そうだ、今回は俺の仕事が休みだったからたまたま協力しているだけであって
捜査は次回に持ち越し―
とか言われても協力できな・・・・い・・・・っていっても・・・・
一度協力しちゃったらなぁ・・・・
くそぉ・・・総悟のヤツ、いつかギャフンといわせてやりたい・・・
グチグチとそんなことを考えていると
ふいに、再び機械独特の音が受信機を通して聞こえてきた。
[ガガッ― あーこちらB地点。
何者かが由良のいる方向へと向かっている様子
ちゃんと見張っとけよ土方死ね]
[総悟ォォォォ!!てめっなにどーぞ的ノリで俺の悪口言ってんだ!!]
[何言ってんですか土方さん。これは悪口じゃなくてたんに俺の願いでさァ]
[いや、そこは別に悪口でいいだろぉが!何でだよ!。]
土方さんの大声が耳に響く。
『ちょっとお二方。通信機ごしに喧嘩なんかしないでくださいよ・・・
耳がすんげー痛いです・・・・。』
たく、作戦中になにやってんだか・・・
[そうですよ、副長、隊長!作戦中なんですから!。]
[くそっ・・・・悪かったなぁ・・・・]
[まったくでさァ。]
[総悟・・・テメェ・・・・]
[トシ、おちつけ。今は由良さんの身の安全のほうが大事だ!。]
まだ終わりそうにない耳元でギャーギャーと騒ぐ声に俺は頭を抱えたくなる。
たのむからちゃんとしてください
いや、マジで・・・
「ちょっとアンタ。」
『!?』
[[[[!?]]]]
ふいに、誰かが俺の肩をたたいて呼びかけた。
大きな、おそらく肉厚のある手。
緊張が走る。
俺はゆっくりと振り向いた。
「こんなところ一人で歩いて・・・あ、もしかして友達いないとかぁ?」
『・・・・・』
「ちょーやばくない?そうゆーのマジなくない?」
視界に移ったのは
ガングロに金髪の・・・・
『ハム・・・・?』
「マジありえないんですけど!!初対面でハムとかマジありえなくなくない?!
マジ失礼なんですけど!?」
ありえなくなくないって・・・何語だホント
いやまぁ、失礼だったけども・・・
「ハムじゃなくて公子だしぃー」
『ハムも公もあんま変わんないじゃないですか』
当たらずとも遠からずってやつだ。
「ちげぇだろ!?意味合い的に全然違うんですけどォォォォ!!」
『えと、それで・・・ハム子さんはお、・・・私になにか用ですか?』
「公子って言ってんじゃん・・・・」
あれ、ハムだか公だかわかんなくなってきた・・・
「アンタがこんなとこ一人でいるから、アタシが声かけてあげたんですけどぉ」
『あぁ、そうですか、余計なお世話なんで。ありがとうございました。』
「何がありがとう!?なんも心こもってないじゃん!?
明らか心にもないこと言ってんじゃん!!
余計なお世話とか言ってるし!!」
「ちょっとぉー何この子、さっきからちょー失礼なんですけどぉ」なんていいながら
公子さんは自分の髪を手先で遊ばせる。
『ていうか、あなたもなんでこんなところにいるんですか?』
「アタシィ?アタシはー彼氏と別れてちょーネガティブになってたから
一人になれる場所探してたっていうかー」
・・・・彼氏・・・・?
彼氏?
あれ、彼氏ってなんだっけ?
アレ?
[まずいな、このままではそのハム子さんにも危害が及ぶかも知れんぞ!!]
いままでいったい何をしていたのか、
久しぶりに聞こえた近藤さんの声に、そういえば囮捜査中だったな
なんて悠長なことを考える。
[ま、あんなの誰も攫わないと思いますがねェ・・・ていうか攫おうにも
攫えませんぜ、絶対。]
あぁ、確かに・・・
って、そんなことはどうでもよくて!!
たしかにここは少し危ないかもしれない。
ここはいったん捜査を中止してでも公子さんを移動させたほうがいいかもしれない。
『あの、公子さん。お話ききますから、ここからちょっと移動しませんか?』
「は?何?別にアタシはいいけっ・・・!?」
『!?』
おそらく彼女は肯定の言葉を口にしようとしたのだろう。
しかし、彼女の言葉は最後までそれを伝えることは出来なかった。
一瞬の出来事だ、
彼女のそばに何か黒いものが現れて彼女を攫っていったのだ。
『っ、早い!?』
すでに小さくなりつつあるその人影に目を見開く。
[どうした!!早瀬!!。」
『っ、土方さん!公子さんが何者かに攫われたようです!!。』
[何っ!?]
声をはりあげ、急いで後を追いかけようとした時、
『なっ!?』
何者かが俺の後ろから襲いかかってきた。
さしずめ、誘拐現場を見られた口止めといったところか、
襲い掛かってきた黒ずくめは刀を持っていた。
くそ、こっちは手ぶらだ。
[由良さん!!大丈夫か!!今すぐそっちに向かう!!]
近藤さんの少し焦ったような声色も、
今は少し小さく聞こえた。
今目の前にいるやつに集中しなければならない。
気を抜いては危険だ。
黒ずくめの一撃を間一髪でよけると
そのまま蹴りこもうと足をあげた、
しかし、相手ももう一撃あたえようと刀を振りかぶっていた。
『ちっ、』
急遽足を出すのを変更し、振り上げられる刀に身構える。
狙うは白羽鳥だ。
「!?」
狙いどおり、相手の刀を白羽鳥でおさえると
相手は驚いたようで一瞬動きを鈍らせる。
まぁ、俺がソレをみのがすわけもなかった。
『スキあり!!』
鳩尾に一発、こんしんの蹴りを入れる。
相手はひざをつき、その場に倒れこむ。
『ふぅ、くそ、早く追いかけないと・・・。』
公子さんが攫われた方向へ走り出そうとしたとき、
バキッ
俺の足の下からなにか壊れるような音が響く。
『・・・・・』
おそるおそる足をあげると、粉々になってしまったおそらく受信機だったもの。
『あー・・・・』
どうやら蹴りを入れた衝撃で地面に落ちたことに気づかず、
踏みつけてしまったようだ。
しかしまぁ、ソレを悔やんでいる暇もないわけで。
なかったことにしよう
そう思い、走り出した。
bkm