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部屋の中には、相変わらず瞳孔をかっ開いた大串・・・じゃなくて土方さん。


そして、顔の見た事のない男性(おそらく局長)。


それから、俺を呼び出した張本人である総悟が部屋の隅で
アイマスクを装備し、眠りこけていた。


局長と思われる男性は山崎さんの後ろにいる俺をみて、少しばかり目を見開く。


その反応に俺は内心苦笑いをこぼす。
彼の今思っているであろうことが容易に想像できたからだ。



「えっと・・・君が総悟の言ってた・・・?。」



『まぁ、総悟が何を言っていたかは知りませんがたぶんそうです。』



正直嫌々来たので曖昧に言葉を紡ぐと、局長さんは顔に笑みを浮かべた。



「いや、すまないね急に来てもらって。」



『いえ、こちらも店が休みで暇だったのでかまいませんよ。』




別に本心はそんなこと思っちゃいないが暇だったのは事実。
それに、目の前にいるこの大らかそうな男性を
困らせたくないと思ってしまった。




「そう言ってもらえるとありがたい・・・とりあえず座って座って。」




『ではお言葉に甘えて・・・。』



俺は局長さんと土方さんの座る前に、ある程度距離をとり、腰をおろす。




「すまない、自己紹介が遅れていたな。俺は真選組局長 近藤 勲だ。」



『えと、ご存知とは思いますが早瀬 由良と申します。』



「唐突なんだが急ぎのようでな・・・少々話をきいてくれるかい?。」



『えぇ、かまいませんよ。』



俺がそううなずくと、近藤さんは少し真剣な顔つきにかわった。



「知っているとは思うが『婦女誘拐』が最近江戸で多発していてな・・・。」



『今朝もニュースでやってましたね・・・三度目の犯行だとかで・・・。』



その言葉に近藤さんは少し申し訳なさそうに顔を歪める。



「恥ずかしい話、奴らの手口が読めなくてね、三度目の犯行を許してしまった。」



ふと、そう言う近藤さんの震えた拳が目に入った。



その姿はとても立派な人に見えた。


彼は、犯人を今だ捕まえられない自分を本当に恥じているのだ。
世間の目をきにしているわけでも、警察だからというわけでもない。


一人の人として、己の愚かさを恥じていた。




どこか納得してしまった。





この人だから総悟みたいなアクの強いやつがついていくのだ。



「そこで、君にはすまないが囮捜査の囮になってくれないかと・・・。」



『話は分かりました。いいですよ。』



俺はため息混じりに了承する。


もとよりこっちは脅されて来ているのだ。
拒否権などあるわけが無い。


まだ部屋の隅で寝転がっている総悟を若干にらんでいると、



「おい、。」



と、今まで黙っていた土方さんが口を開いた。




『はい?。』





「すまねぇなぁ・・・総悟のヤツが無理やりつれてきたんだろ・・・?。」



その思いもよらない謝罪に俺は目を丸くする。
この人も長年総悟と一緒にいるだけあって行動パターンはお見通しなのだろう。




『いえ、いいですよ別に。弟がダダこねたようなもんなんで・・・。』




正直、小さい子がダダをこねる。
というレベルではなかったが見栄を張ってそんなことを言ってみる。


少々総悟への皮肉もこめて・・・



「何が弟のダダでィ・・・。」

『うわっ!?。』



いつの間に起きたのか、
俺の真後ろにいた総悟が少し不機嫌そうな表情を浮かべて言った。



思わず声を上げた俺はけして、ビビリとかではない。



「俺がお前の弟にいつなったってんでィ。」


そういいながら総語は俺のほっぺたをグイグイと引っ張る。



『い、いひゃい・・・』



「おうおう、よく伸びまさァ。」


徐々に声色が楽しそうになってきた総語に俺は危機感を覚える。






ヤバイ、Sだ Sの目だ!!




ほっぺたをこれでもかというくらい伸ばされ、
うまく喋れない俺は
土方さんに目で助けてくれと訴えかけるが



「そういえばお前総悟の年上だったな・・・。」



なんてどうでもいいことを呟いている。



助けてくれる気配は一向に無い。





「総悟、そのへんにしてやれ。せっかく来てくれたんだぞ。」





そう言ったのは近藤さんだった。



すると、総悟は素直に俺のほっぺたから手を離す。


鶴の一声とはまさにこのこと。


じんじんと痛む頬を押さえながらそんなことを思っていた。











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