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すこし、何を話せばいいのか迷っていると
銀さんは何を思い出したのか少し口元を緩ませた。




『?。』




「あぁ、いや、さっきから言ってる知り合いのこと思い出して・・・」





やめてくれ、笑わんでくれ。


つか、もう俺の話はいいから・・・マジでお願いします。


300円あげるから



「そいつ、会って間もないころに一回、
         体中に怪我して帰ってきたことがあったんだよ。」




笑いながら銀さんが話すその内容に嫌な予感が体中をかけめぐる。



「そんで、どうしたんだって聞いたら。
"買い物の品をひったくられたんで、犯人のバイクを自転車で追っかけてた"
                         って言いだしてよォ。」




なんとも心当たりのありすぎるその話に
やっぱりか・・・と俺は涙目になる。




もうその話は掘り返さんでくれ。



あんた等にさんざん笑われたのは一生忘れられんから。





だけど俺は


『はははっ、すごいですね。』


なんて乾いた笑みを浮かべる。




「・・・でもそいつ、料理はうまいんだよな〜。」




おっ。





そして、突然のほめ言葉に俺はにやけそうになる口元を必死にこらえた。






「どっちかってーと気もきくし、よく働くし・・。」




まさか、褒めている相手が目の前にいるだなんて思いもしないだろう銀さんの話に
俺は上機嫌で耳を傾ける。


気分はなんかもうドッキリの仕掛け人。





「でも、バイクを自転車で追いかけたりするのは馬鹿だよな〜
                   抜けてるところもよくあるし。」




しかし、だんだん俺のダメな所を言い始めた銀さんに俺は眉を寄せる。




「やっぱ総合的に見るといわゆる馬鹿だよアイツは銀さん心配だわ〜。」







『アンタに言われたくないんですけど。』










・・・・・。





つい、そう口にしてしまった俺は口元をばっと手で隠す。





しかし、時すでに遅しなわけで・・・


銀さんもばっと目を見開いて俺のことを見つめる。





「お・・・お前・・・・。」





やばい やばい ひじょーにやばい。






口元を押さえたまま冷や汗をだらだらと流すおれの動揺は
誰の目から見ても十分にわかる。








それがまた銀さんの疑問を確信にもっていってしまったわけだ・・・






つくづく自分の体の素直さにいやになる。
汗は止めたくてもとまらんのだ・・・・










「お前・・・・由良なわけ・・・?。」









仕事に少し慣れてから
座って飲んだり食ったりしてるだけで金がもらえるなら
楽な仕事なのかもしれない・・・と少し思っていたことに大きな後悔をする。







普段しもしない、神様への願い事も。



すっかりかなわなかったわけで・・・




「これからどうしようか」とか、あきらめた気持ちと
「どうやってごまかそう」とまだ嘘を貫きとおそうとする気持ちが矛盾しながら



俺はただただ顔をゆがめて銀さんから視線をそらそうとする。




なぜにこうなってしまうのか・・・・







― コレで自分の不運をのろったのは何度目なのか ―








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