「あ〜!!いらっしゃあ〜い。助さん今日も着てくれたの〜!!ユリ嬉しい〜。」
「ねぇ、あたし今日はどんぺりとかのみた〜い。」
「ふふっ、京さんっていつみてもかっこいいわ〜。」
・・・なんとか、髪型も化粧も時間以内におわり
今は接客しなければならないのだが・・・。
俺はまだ店の奥で閉じこもっている。
「・・・由良君。もうあきらめなさい。早く客とらないと給料払わないわよ。」
『いやっ、俺別に給料とかどうでもいいって言うか・・・てか・・・』
誰・・・コレ・・・・。
俺は少し大きめの手鏡にうつった自分の姿に少し泣きたくなった。
「そんなに落ち込むことないわよ。女の私から見てもかわいいわよアナタ。」
『・・・あんま嬉しくないです。ていうか、男はまだ捨てたくない・・・。』
そうつぶやいて、一向に店へと出ようとしない俺に悦子さんは少し
何かを考えるそぶりをしてから
俺に視線を向け口を開いた。
「・・・・変なこというのね。女は捨てたのに男は捨てられないなんて。」
『何いってるんですか・・・女捨てて、男になったからこそ
男は捨てたくないんですよ。』
「・・・そういえばそうね。」
『そうですよ・・・・って、・・・・えっ?。』
俺は、目を見開いて、悦子さんのほうへ振り返った。
あれっ?・・・・・今・・・・なんと?
ひとつも誤りがないようゆっくりと、今までの会話を思い出す。
「・・・・変なこというのね。女は捨てたのに男は捨てられないなんて。」
女は捨てたのに男は捨てられないなんて
女は捨てたのに
女は
『だぁぁぁぁぁああああ!!なっ、なぜに!?』
突然頭が真っ白になった俺はまくし立てるようにして悦子さんに詰め寄る。
「あら、女の勘をなめちゃだめよ?。」
『う゛っ・・・・』
言葉につまり、顔をゆがめると。
「ほんとはね。確信なんてなかったのよ?
ただ、あの子達に服着せられたりしてるアナタをみると男の子には見えなくて・・
かまかけたんだけど・・・まさか本当だったなんてね・・・。」
と、悦子さんは少し困ったように苦笑いを浮かべる。
『そっ、そんな・・・・』
ということは、もしかしたらまだ俺があせらずに「男だ。」
と言い張っていればばれなかったのかもしれないのか・・・・
しまった、と頭をかかえていると。
「でも正直よかったわ。いくら女の子に見えても
男の子をキャバクラで働かせるのはちょっとだけ気が引けたのよね
本当のところ・・・。」
「でも、これでなんの気兼ねもなく働かせれるわ。」と
不適に、キレイに笑う彼女の顔が
酷く歪んで見えた気がした。