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パンッ



と、小気味のいい音をたてて顔の前で手を合わせた女を見て
お登勢は今まで吸っていた煙草の火を灰皿でもみ消した。







「誰か可愛い子紹介してくれないかしら?
             しばらくの間でいいから貸してほしいの!。」




女は、相当困っているのだろう。


それはお登勢にも十分に分かっている。



しかし、






「あたしの知り合いには『キャバクラ』で働けるようなヤツァいないよ・・・。」





と、少し困ったような表情を見せた。





「どいつもこいつも悪たればかりさ、仕事の一つも出来やしない・・・。」



「そこをなんとか!!。」



「そう言われてもねぇ・・・。」








『すいません、お登勢さん。キャサリンさん何とかしてくれませんか・・・。』








困り果てた顔をしてやって来た由良に、二人は顔をいっせいに向ける。









「あんた・・・。」 「あなた・・・。」










『なっ、何ですか?何かありました?。』




二人の妙な気迫に押されぎみの由良は口元を引きつらせる。





"嫌な予感"まさにそんな感覚だった




















『ムッ無理ですよ!!何言ってるんですか!!。』



「そこをなんとかお願いよ!!報酬ははずむから!!。」



『そこは正直どうでもいいですよ!!俺は男ですってば!!。』


俺は今、目の前の女性の頼みを 首が千切れんばかりの勢いで断る。




「男でもいいわ!!あなた可愛い顔してるじゃない!!ちょっとだけ
                       女装するってことで!!。」



なにやらこの人は、俺をキャバクラで働かせると言うのだ。
いくら少しの間と言っても、色々とまずい。



『男がかわいいって言われても嬉しくないですよ!!』



そんなことを言って必死に逃げようと言い訳をならべる。



だって正直本当は俺女だしね・・・。
ていうか、キャバクラって・・・




「・・・由良。ちょいとこの子を助けてやってくれないかい?。」




『え゛っ・・・』




お登勢さんにそう言われ、俺は固まる。




「アタシからもお願いするよ。」




『・・・』




俺は頬が引きつるのを感じた。


お登勢さんが俺に頼みごとをするのは少し卑怯だ・・・



だって



だって






『・・・お登勢さんに言われちゃあ断れないですよ・・・』





俺は観念したように大きな溜息をつく。


「ありがとう!!えっと・・・由良君ね!!
                 私は悦子(えつこ)って言うの!。」


目の前のグラマーな女性。


悦子さんに俺は手をとられる。




「あら?いいデザインの腕輪ね?もらい物?。」




悦子さんの視線の先には俺の右手首についた銀色の腕輪。



『まっ、まぁ そんなところです・・・・。』



正直思い出したくも無い思い出が詰まりにつまった代物だ。
俺は少しあいまいに返事をする。



「ふふっ、モテる男はいいわね!それじゃ明日の朝迎えに来るわ!。」



悦子さんはそう言うと、お酒の代金をカウンターに置き
さっそうと店から出ていった。



俺に必死にお願いをしていた時とはうって変わって上機嫌だ。
なんだか少しだまされた気分になる。





少し気落ちした俺に、お登勢さんはなんとも言えない表情を向ける。





「・・・すまないねぇ。なんとか頑張っておくれ・・・。」





『・・・。』











大変なことになった・・・          気がする。





  


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bkm
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