そこには狼の顔をした天人と、その前で尻餅ををついている
眼鏡をかけた、おそらく俺より少し年下の少年がいた。
先ほどの話の通り、少年は沢山荷物を持っていたらしい
スーパーの袋が沢山転がっている。
しかし、それをボーっと見ていた俺を良く思わなかったらしい狼の顔をした天人は
矛先を俺にかえたようで
「おい!そこのテメェー何見てんだ!?」
と、怒鳴りつけてきた。
何ともめんどくさいことになってしまった。
俺は早く店に行かなきゃならんのに・・・
『いや、すいません。少しの服の汚れで、
それほど怒ることは無いのではないかと・・・』
普通はそうだと思う。
そりゃあ、『コーヒー頭からぶっ掛けられた』とかなら
怒るのも分からなくは無いけど
ぶつかって出来た少しの汚れで目くじらを立てる必要はないと思う。
「あぁん!なんだお前!俺に喧嘩売ろうってんのか!?」
なぜそうなるのか、
ずいぶんと下でにものを言ったとおもうんだけども。
あぁ〜ますますめんどくさい・・・
て言うか喧嘩売ってんのはどう考えてもアンタだろ
黙りこくってそんなことを考えていると
狼の天人は周りの通行人にも怒鳴り散らしだした。
みんな目を合わせないようにしてそそくさと早歩きに通り過ぎて行く。
さしずめ、とばっちりなど受けたくないのだろう。
俺だって就職がかかわっているのでこんな所で足止めされるのはごめんだ
仕方ない・・・
「おい!何黙りこくってんだ!地球人の分際で
『 ・・・なら・・ じゃねぇーよ・・・。』
「あぁ?!」
『汚れて困るような服なんだったら
こんなところに着て来んじゃねぇーってんですよ。』
言いたいことをダイレクトに言わせてもらう。
まぁまぁ大きめに声を出したからか、
はたまた大人しそうな俺がそんなことを言ったからか
尻餅をついていた眼鏡の少年は目を丸くして俺を見ていた。
「なんだとぉ!!。」
俺の言葉に痺れを切らしたらしい狼の天人は
腰にさしていた刀を抜いて俺の方へと向かってきた。
「きゃあああああ!!」
通行人はその光景を見て声を震わせる。
なぜなら俺は腰にさしている刀さえ抜いて居ないから
ただじっと立っている俺に
狼の天人は
「フハハハッ!!怖気づいたか!!刀も抜かず何ができる!!」
と言って俺に突っ込んでくる。
そして、俺に刀を振りかぶろうとした。
「危ない!!」
尻餅をついていた眼鏡の少年がそう叫んだ気がした