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男は立っていた。


ただ病院の窓からタバコを吹かし、たたずんでいた。



― 今年はまるで厄年だ 思い出すのは悪い思い出ばかり
もう何度職を変えたかわからんし
ようやく見つけた仕事も 謎のオッサンの衝撃でオジャン
車は爆発炎上 ―




「・・・ククク  なんかもう笑けてくるな。」





男は物思いにふけりながらそんなことをつぶやく。




「アッハッハッハー 殺せよォォォ!!俺のことが気にくわないんだろォ神様!!
 俺もお前なんて大嫌いだバーカ!!。」



涙を流しながらそんなことを叫ぶ男に、女は声をかけた。




「長谷川さん。」




男の名前は長谷川と言うらしい。



「もォー こんな所でタバコ吸っちゃダメって言ったでしょ。」



ショートカットの良く似合う小さな顔の黒髪の女は
少し困ったような表情を浮かべる。




「あっ・・・スマン・・・つい・・・。」




「それからまだあんまり出歩いちゃダメよ
ケガにさわるわ さっ部屋に戻りましょ。」




女はそう言うと男の体を支えながら歩くようにと、仕向ける。



― 彼女はこの病院の看護婦 内野さん
気立てが良く 面倒見のいい子で
何かと俺の世話を焼いてくれる。
何よりもべっぴんさんだ 患者達のアイドルとしてみんなに慕われている。
今年 俺の周りで起きたいいことといえば 彼女と会えたことぐらいだろうか。


だが、その夢も長くは続くまい・・・なぜならば夢とは ―




男は自分の病室の入り口まで来てそのいつもとは違う異変に気づく。




「!。」




視線の先には見知った3人の奴らと
男の記憶の中では知らない青年(?)がいた。




「なーにが食べ物は腐る一歩手前が一番うまいだよ!
完全に腐ってたじゃねーか!!。」




「なんでも人のせいにしてんじゃねェ!!
男は十六過ぎたら自分の胃袋に責任もてバーカ!。」




枕や点滴を手に、ギャーギャーと言い合う男2人に




『ちょっ、もう 静にして貰えません?そこのお二方。
頭にガンガン響くんですけど〜・・・。』



少し迷惑そうに眉をひそめながら耳に手を当てている青年に




「看護婦サーンおかわりィィ!!。」





病院食であるご飯のお茶碗を片手に叫ぶ少女。


いささかこの景色はどこか異端である。



「あっ、今日から入った(入院)人達 仲良くしてね。」



その風景に足を止めていた男に女はすかさず口を開いた。


男の顔はとんでもない物を見た時のように口を開け、眉を寄せた。




― 夢とはいつも簡単に悪夢に変わるからだ ―









「へェーじゃあ皆さん長谷川さんのお友達なんだ
フフよかったね長谷川さんこれで入院生活も寂しくないじゃない。」



看護婦さん、この女の人は内野さんと言うらしい。
その言葉に俺だけは内心首をふる。


俺はこんな人知らないいです・・・



でもまぁ そんなことはおかまいなしに話は進むわけで・・・



「止めてくれ内野さん コイツらとはただの腐れ縁。」



「ちょいとちょいと 今、腐れだとかそう言う言葉に敏感だからやめてホント。」



銀さんはすかさずここ(病院)に来た原因であるそのセリフを聞いて口を開く。



「ていうか、なんでカニ食べてない由良さんも入院してんですか?。」



今更とも言えるが新八君は俺の存在に首をかしげた。



『いや 新八君達が救急車で運ばれてから 高熱でぶっ倒れたみたいでね。
                 俺も運ばれちゃったんですよ・・・。』



俺がそう言うと長谷川さんと言う人はまた首をかしげた。



「そういやぁ兄ちゃんは見ねぇ顔だな コイツらとどういう関係だい?」



そこで そういえば自己紹介してなかったなぁ〜と思い、口を開く。



『あっ、俺早瀬 由良って言います。
        少し前から銀さんのところでお世話になりつつ 
            下のお登勢さんの店で働かせて貰ってます。』


「俺は長谷川って言うんだよ。まぁ、さっき言った通りコイツらとは腐れ縁だ。」


自己紹介を終えたところで、銀さんは長谷川さんに声をかけた。



「しかし、アンタもつくづくツいてねーな 謎のオッさんに襲われたって?。」



見れば手にバナナを持ちながら
もっさ もっさと食べている。



「この管理社会においてさァ謎のオッさんに遭遇すること自体 稀有だぜ。」



「ねェ、なんで人の見舞いの品 あたり前のように食べてんの?。」



どうやらこのバナナ 長谷川さんの見舞いの品らしい。
しかし、そんなことはこの人達に関係あるはずもなく。


同じくバナナをもっさもっさと食べている新八君と神楽。



「長谷川さん見てたら食中毒如きで苦しんでた自分がバカらしく思えてきましたよ。」



ほんとにね。俺も熱如きで苦しんでるのがバカらしく思えるよ・・・



「アリガトネ バナナのオッさん。」



「いや バナナのオッさんじゃなくて オッさんのバナナだから それは。」



そんな長谷川さんの訴えもむなしく
内野さんまでもが もっさもっさ



「食中毒になった直後にもの食べれるなんて元気な人達ね。」



ですよね?おれも心底そう思います。



「長谷川さんも負けてられないわよ
           いっぱい食べて元気モリモリにならなくちゃ。」



「なんで元気モリモリの人が食べてンですか?。」



そして俺も もっさもっさ



『長谷川さん俺 元気モリモリじゃないです。
                栄養取らないといけない病人です。』



「いやいやいや そういう問題じゃないからね?
        何度も言うけどオッさんのバナナだからね?それは。」



人が食べてるものって美味しそうに見えるんですよ
       だからどうせなら俺も と思ってしまいまして・・・



バナナを もっさもっさすることは止めず
    心の中だけでそんな言い訳じみた謝罪を長谷川さんにする。



「じゃあ私 仕事戻るけど、みんな仲良くね。」



そう言って内野さんは部屋を出ていくが
        どこかふらふらしていて壁に頭を撃ちつけた。



「いたた。」




どじっ子とでも言うのか どこか可愛くも見えるその姿に



「・・・銀さんやっぱりナースっていいですね。」



と、新八君がつぶやく。



「たとえばさァ7点の娘がいるとするだろ?
     だがナース服を着ることによって これが10点になる。」


そんな2人のくだらない話に耳をかたむけた神楽は
どこから引っ張り出したのか ナース服を着て2人の前に立った。



「マジすか じゃあ私がナースになったら大変アルヨ 一体何点アルカ。」




「「   三点   。」」



「コルァ どーゆことだ ゼロからの出発か?逆境からの出発か?コルァ。」







ホントにくだらん・・・




 


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