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「ハァ〜・・・案内しろって言われてもよぉ〜どこ行きゃあいいわけ?。」


俺の隣を歩く坂田さんは心底めんどくさそうに
死んだ魚の様な目をさらに濁らせて言った。



『そうですね、なにか商店などでにぎわっている所とかないですか?
         俺まだスーパーしか言ったこと無いんで・・・。』



「にぎわっている所ねぇ〜。」



少し考えるようなしぐさをした坂田さんは
何か思い浮かんだらしい、パッと表情を明るくすると
先ほどまでのダラダラした歩き方とは打って変わって さっさと歩きだした。



「俺良いとこ思いだしたわ。」



あからさまに態度の変わった坂田さんを少し怪しく思いつつ・・・
それでもやっぱり案内してくれると言うのだから 素直についていくことにした。



足のコンパスの違いによって、少々俺より歩くのが早い坂田さんを追いながら
ある程度道を覚えるために周りを見回す。


まぁ やはり都会というわけか、天人はそこら中を歩いている。
俺が少し前にいた田舎とではその数は比べ物にならない。


それにしても、いつになっても天人という奴には慣れない。
理由を述べるのなら 気味が悪い、というか気持ち悪い。


カエルやタコ、狼に虎のような顔をしているくせに
体は人間のように二足歩行だし。


そんなことを思いながら、あちこちに向けていた視線を前へと移すと



ドンッ



『フガッ!。』



目の前が白くなった
どうやら足を止めた坂田さんの背中にぶつかったらしい
頭上から坂田さんの声がした。




「何やってんのお前・・・。」




『ずっ、ずびばせん・・・。』



少し痛かった鼻をおさえながら言う。



「まぁ、いいけどよ。ほらここら一帯店がにぎわってんだろ?。」



坂田さんが言った通り、このあたりは何やらにぎわっているようだ。
呼び込みの声や、客の声が辺り一帯に響き合っている。


そこで、周りを見渡してから少し首をかしげる。



『・・・えっと、坂田さん。確かに店がにぎわってますけど・・・
    ここら辺にある店って全部甘味所じゃないですか・・・。』



そう、ここら辺はにぎわっている。
女性や子供の声を主にして・・・




「そうだけど? おい、こっちこいって。」




さらりと、あたりまえだと言わんばかりに言ってのける坂田さんに
溜息をつきたくなったが
それよりも早くに、坂田さんに手招きをされる。



『なんですか?。』



すると坂田さんはある店へとさっそうと入って行く、チラリと看板をみると


[パフェ チック]


と、ポップな字体で書かれている。



どうやらパフェの専門店らしい・・・
仕方なく坂田さんのあとに続いて店の自動ドアを潜り抜けると
甘いにおいが鼻をくすぐる



別に甘い物は嫌いではないので嫌な気はしない。むしろ美味しそうに思う。


店内を見回すとすでにソファーへと腰を下ろしている坂田さんが手招きをしている。
そこへと向かい、坂田さんの前の席に向かい合うように座る。



『目的はここですか・・・。』



少し呆れたような表情を向けると、坂田さんは気にした風も無く
メニューを広げながらにやりと口元を上げて笑って見せた。



「まぁまぁ、ここのパフェマジで上手いんだって。ちょうど昼時だし良いだろ?。」



なにが良いものか・・・



『えぇ〜それって今日の昼はパフェってことですか・・・。』



さすがにそれはちょっと・・・と苦笑いを浮かべる。



「別にそんな日が一回くらいあっても良いじゃねぇ〜か。」



そう言うと坂田さんは持っていたメニューを俺へと向けた。
どうやら自分が注文するパフェは決まったらしい。

メニューをうけとると これまたポップな字体で
たくさんの種類のパフェの名前や写真が書いてあった。


パフェだけでこんなにも種類があるのかと思わず言ってしまいそうになるほどだ。
そこで俺は無難にもイチゴパフェにすることにする。



ていうか、男2人でパフェって・・・(女だけど)
どこか店内では目だっているようにしか思えない。


この人は何も思わないのだろうか・・・
そんなことを考えて坂田さんを横目でチラリと見る。



しばらくして 店の制服を着た可愛い女の子がこっちへと歩いてきた。



「御注文はおきまりですか〜?。」



「おれはフルーツパフェチョコソースね。」


『俺はイチゴパフェで。』



「かしこまりました。少々おまちください。」




店員さんはそう言って俺達の席から離れて行った。



『坂田さんって、よくここに来るんですか?。』



ふと、そんな質問をすると坂田さんは少し首をひねった。



「あぁ〜・・・微妙なところだな・・・。」



微妙?どういうことだ?


俺の疑問が伝わったのか坂田さんは続けて言った。



「俺さぁ、医者に血糖値高すぎって言われてパフェなんて週一でしか食えねぇのよ。」



糖尿寸前って・・・この人大丈夫なのか・・・。
と言うか、普通は週一のペースでもパフェなんて食べないだろ・・・



ここへきてから 心なしかいつもの死んだ魚の様な目が
輝いているように見える坂田さんを見ると
なんだかそんなことが言えなくなった。


この人俺より年上なはずなのにな・・・


そんなことを思っていると、注文したパフェが出来たらしい
先ほどの店員さんがお盆にパフェを二つのせて
こちらへと歩いてくる。


「お待たせしました〜フルーツパフェチョコソースとイチゴパフェでございます。 ごゆっくりどうぞ〜。」



再び去っていく店員さんを見送りながらパフェを食べるためにスプーンを手に取る。



「うひょ〜きたきた!。」



テンションの上がる坂田さんを横目に、一口 口に入れる。
味は、思ったよりも控えめの甘さでちょうど良かった。



『本当だ。美味しいですね。』



そうつぶやくと、坂田さんも口にパフェを運びながら頬をゆるませる。



「だろ?。」



『坂田さんって本当に甘いもの好きですね。』



少し、笑いながらそういった俺に 坂田さんはけげんそうに眉を寄せた。



「なぁ、その坂田さんっていい加減やめね?かりにも一緒に住んでんだぜ?
      もっとゆるい感じで“銀さん”とか“銀ちゃん”で良いって。」


そういえば、神楽や新八君は名前で呼んでたな・・・



『そうですね。・・・んじゃこれからは銀さんで。』



何だか少し胸が暖かくなったようで
自然な笑みがでた。



「・・・おぅ・・・。」



少しぎこちなくなった坂・・じゃなくて銀さんの答えに
少し疑問に思いながらもパフェを口に入れる。



銀さんって見た目よりなんだか可愛い人だ・・・。









「あっ、そう言えば今日俺、財布持ってねぇ〜わ・・・。」











は?








「・・・まぁ、これから家においてやるってことだからさ
                 今日くらいよろしく頼むわ。」



そんなことをさらりと言いながらもくもくとパフェを食べ続ける銀さんに
少し青筋が立ったのは気のせいだろうか・・・








ていうかなんかデジャビュ?









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