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もうすぐ冬も終わりだがやっぱりまだ寒い。


俺は階段を下りながら体を震わせた。
階段を下りて店の扉の前に立つと



トン トン



と軽めに戸をたたく


そして




『おはようございます。』




と言いながらゆっくり扉を開けた。



「おや、少し早かったねぇ。」



今度最初に俺を出迎えてくれたのはキャサリンさんではなくお登勢さんだった。



『初日なんで、少し早めに来たほうがいいかと思いまして・・・。』



「いい心がけじゃないか、上のアイツらにもそうしてもらいたいよ。」



『ハハハッ・・・。』



俺は少し苦笑いをうかべながらも店の中に入って行った。



『えっと、朝は掃除でしたっけ?。』



早速仕事に取り掛かろうとしたがお登勢さんは



「いや、今回は買出しにいってくれないかい?。」



と、言って俺を制した。



『買出しですか?』



「そうさね。お酒がちょいとたりなくてね
     重いだろうが七本ほど買ってきてくれないかい?」



なんとも中途半端な数字だが俺は快くうなずいた。



『いいですよ。』



「それじゃあ、コレ お金だよ。あと、店までの地図。」



『すみません。』



そう言って、お金を先に受け取ろうとしたがその額をみて少し首をかしげる。



いくら七本でもこんなにいるのか?


そんなに高いお酒でも買うのかな?



『お登勢さん、コレ多くないですか?。』



俺は疑問を解決するためにお登勢さんに問いかける。



「んにゃ  あってるよ、日本酒七本ぶんと、あんたの服の代金。」



タバコを吹かしながらそう言うお登勢さんに、俺は目を丸くした。



『そっ、そんな!もうしわけないですよ!』



「遠慮なんてしなくていいよ、あんたもその服一着しかないんじゃあ困るだろ?
           他にも何か必要な物があるんだったら買っておいで。」



俺はお登勢さんにそう言い切られて何も言えなくなってしまう。



あぁ、なんて優しい人だろうか




少しの見た目とのギャップに
俺は頬をゆるめながら少し泣きそうになってしまった。



いかんな、年をとると涙腺がゆるんでしまって(まだ19だけど)



『っ、ありがとうございます。ありがたくお借りします。』



「ん?借りるって・・・」



『そうです、お借りしますから 必ずお返しします。
                   それじゃ いってきます。』



ニッコリと目を細めて微笑みながら俺は扉を開けて出て行った。







「フフッ、まったく・・・ちゃんとキレイに笑えるじゃないかい・・・。」




 


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bkm
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