「あんたの仕事は・・・そうさねぇ、昼は掃除 夜は接客といったところさね。」



俺はお登勢さんの話を聞いてうなずいた。



俺がこの店に来て初めて見た化け猫はキャサリンさんというらしい。
お登勢さんの説明を受けている今も、たぶん睨まれているのだろう。


視線が痛いくらいに伝わってくる。


だけど俺は何事も無いかのようにお登勢さんの話を聞く。
別に睨まれてるだけじゃぁ害はないしね。



「他に何か質問はあるかい?。」



お登勢さんにそう聞かれ、俺はある事を思い出した。



『あの、住み込みで働くというものだったと思うんですが・・・
                  俺は何処に住めば?・・・。』



店内を見回して見るが、店の奥にも空いている部屋らしき部屋は何処にもない。


たぶん店の奥にある部屋はお登勢さんとキャサリンさんのだろうし・・・



「あぁ、そのことかい。」



そう言うとお登勢さんは俺の方を見て不思議そうな顔をした。



「あんた、荷物なんかは無いのかい?住み込みなんだったら家の物
                       持ってくんだろ?。」



『あー 俺、12の頃から家なんて無いんですよね。』



「・・・。」



「・・・。」



「・・・。」



何気なくそうこぼすと

今この店に居る お登勢さんはもちろん、俺を心配して着いて来てくれた新八君
俺をあんなに敵視してたキャサリンさんまでがぼーぜんとしている。



「きっ、着物なんかは?」



一番最初におそるおそる聞いて来たのは新八君だった。



『それくらいの金は俺を襲ってきた人からもらっていくんで
       服が汚れたり、やぶれたり、着れなくなったら使い捨てです。』



「じゃ、じゃあ風呂なんかは?」



次にそう聴いてきたのはお登勢さんだった。



『さっきも言ったようにそれくらいの金はあったんで、
         三日に一回くらいで銭湯にいってました。』



そう言い切ると店の中は何とも言えない空気が漂った。



「・・・12の頃からって・・・こんな時代で、よく生きてこられたねぇ。」



驚いたような呆れたような顔をしてお登勢さんはつぶやいた。



『んー、俺もそう思ってますよ。』



軽く笑いながらそう言う俺を見て新八君も心底呆れたような顔をした。



「ほんと、よく生きてこれましたねぇ。
普段の僕なら涙の一つでも流してたかもしれないですけど・・・
           本人がこんなに軽く笑い飛ばしてるだなんて・・・。」



俺あんまり過ぎた事は気にしないタイプなんだよ
今が良ければそれでいいと思えるんだ。

まぁ、言い換えれば後先考えないって事だけど



だって、過ぎた事を何言ってもタイムマシーンがあるわけじゃないんだから
考えるだけ無駄だし、未来の事なんて何が起こるかなんて
分かりっこないわけだし



ようはめんどくさいってこと。



「はぁ、あたしもこんな楽天的な奴ぁ初めて見たよ・・・」



「ある意味銀さんなみの厄介物ですね。」



新八君がそう言うとみんなは

本当にそうだ と言わんばかりにうなずいた。




銀さん?   誰の事だ。


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bkm
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