『いい加減にしてくれませんかねぇ・・・』
黙って聞いてりゃ好き放題言ってくださってまぁ・・・
『・・・アナタ、人のこととやかく言う前に自分の顔鏡で見たことあります?』
そばに落ちてあった角材を手に、肩に担ぎながら笑みを浮べる。
「ハッ、何をひがんでいるのやら・・・俺は生まれながらにイケメンなんだよ。」
男は何をあたりまえのことを
といわんばかりの表情を浮べる。
ちなみに言っておくが、この男
別にイケメンとか全然そんなんじゃない。
分かりやすく簡潔にいうと“汚いひげ面”
どう間違っても“イケテルメンズ”になんてなりえないのだ。
「何をいってるの!!アナタちゃんと鏡みなさいよ!!」
後ろでハムが再び騒ぎ出す。
まるで人のことを言えた立場じゃないことを早急に理解してほしいものだ。
『・・・あなた達も・・・そんな男に美女なんていわれたくらいで
まいあがってんじゃねぇよって話です。』
ニコリと笑みを浮べた俺の怒気を感じ取ったのか
ハムたちはいっせいに口を閉ざす。
『自分で言うのもなんなんですけど
今日は珍しくイラついてるみたいなんですよね俺。
せっかくなんでストレス発散に手伝ってくださいよ。』
そう言って手にしていた角材の先を男の前へと向けた。
『あのまま気絶してたら良かったんですけどね。』
* * * *
『あぁースッキリした。』
男を角材でボコした俺は床に倒れた男の背中に座り、
フーッと息を吐いた。
よくよく男の顔を見てみるとなかなかに無残なことになっている。
そこでここまでした自分に少し苦笑い。
しかしまぁ、怒りがおさまっても
いつもみたいに悪いことをしたな。
なんて気持ちは微塵もおきなかった。
怒りのスイッチなんて何処にあるのか分からないもんだ。
まさか俺もあんなことで怒るとは思わなかった。
今冷静になったからこそこんなことを思う。
まぁ、大分プライドが傷ついたんだろうなぁ
どこか他人事のようにそんなことを考え、
ふと、ハム子さんたちに視線を向けると、
彼女達がずいぶん俺から距離をとっていることにまた苦笑い。
「おい由良。猫捕まえたぞー。」
そして、猫をしっかりと腕にだいた銀さんは
ずいぶんと機嫌よさそうに帰ってきた。
「・・・あり?何この空気。」
なんともいえないこの空気を読み取った銀さんは
倒れた男の背中に角材片手に座る俺を見て、首をかしげた。
「何かあったわけ「万事屋〜!!」だぁぁあぁぁぁあ!!」
帰ってきた銀さんに飛びつくハム子さん。
「なんかよくわかんないけど超怖かったんですけど〜!!」
「よく分かんなくて怖いのはお前だよ!!離れろハム!!!」
じゃれ付く二人を横目に俺はゆっくりと立ち上がる。
『な〜に喜んでんだか・・・』
「え゛ぇっ!?喜んでる?誰が?!俺がァ!?どう見たらそうなんだよ!!」
ギャーギャーと騒ぐ銀さんの話を聞かず。
ゆっくりと部屋を出て行く。
とりあえず真選組に連絡いれんと。
近藤さんに心配をかけてしまったかもしれないという思いにかられ
外にでたら公衆電話でも探そうと考える。
「ちょっと由良!?由良ちゃ〜ん!!?何か怒ってんの!?」
たぶんもう怒ってないですよ。
そんな意味をこめて銀さんのほうを振り向くことなく
ただ手をひらひらと振ってみせた。
next