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とりあえず、

なんとかハム子さん達を見つけ、拘束されていた縄を解くことに成功した。



この際、犯人がどういうつもりでこの4人の女性を攫ったとか
そんなことはどうでも良かった。

考えるだけ無駄だし
なんといっても今この場からどうやって逃げ出すかということのほうが問題だ。


それに、扉を開ける際、鍵を壊したのだ。

犯人が音に気づいていない保障は無かった。
何にせよ、早急にこの場から移動したほうがよさそうだ。



『銀さん、犯人に気づかれるかも知れません。早くここから移動しましょう。』



「あぁ、そうだな。」



『とりあえず、どこか隠れられそうな場所に・・・』



“隠れられそうな場所に移動しよう”
そんな考えをハム子さんたちに伝えようと視線を向けたのだが

フと、頭によぎったのは




“はたしてこの四人の女性を隠せるスペースがあるのか?”



という疑念。


いっちゃ悪いがハム子さん同様。
のこりの三人の女性もなかなかの巨体である。横に。




「無理だな。」


俺が口ごもったことと、表情を読み取り

何を言わんとしているかを感じ取った銀さんは
バッサリと否定の言葉を口にした。


「はぁ?何が」


まるで状況を理解できていないハム子さんは怪訝そうに顔をゆがめた。


「よし、おいお前ら。今からここを脱出するための作戦会議だ」


すると、銀さんは何か良い考えが思い浮かんだのか
手をポンとたたくと

近くに来るように手招きをして見せた。



「今の状況を分かりやすく説明するとだな。この建物内にはお前ら4人を
                   攫った犯人が数人存在している。」



神妙な顔つきでのそのしゃべりだしに
誰かの喉がゴクリと鳴った。


「更に言うと、俺達がここの扉を開ける際、鍵を壊したせいで
        犯人達が気づきこちらに向かってきている可能性がある。」


ことの重大さを理解した彼女達はタダ静かに銀さんの話しに耳を傾ける。



「そこで、俺達は早急にここから移動する必要がある。
しかしだ、これだけの人数で移動すれば敵に見つかるリスクは高くなる。」



その通りだ。
このまま大人数で移動しても見つかって、

今度は俺も銀さんも捕まってしまう可能性が高い。


それではダメだ。


「そこで、二手に分かれて移動することが最善策だと考える。」



『確かに、それだと人数が少ない分、見つかるリスクも小さくなりますね。』


銀さんの作戦に、俺は小さく頷いた。

4人もその作戦に賛成だというように首を縦に振った。



「それで、肝心のグループ分けだが・・・・」





そこで、俺は銀さんにグッと肩を抱き寄せられる。



「俺と由良。それからお前ら4人で分かれよう。」



『えぇ!?ちょっ』



「じゃ、そういうことで〜建物の外でまた集合な。俺ら先行くから。」




そう言うと、銀さんは俺の手首をつかんだまま
壊れた扉の方へと足を進める。



「ちょっと待てコラ!!テメッ、あたしら見棄てる気じゃねぇか!!
     なんだそのチーム分け!!普通に考えて3:3だろうが!!」



「いやいや、ちゃんと公平だろ。しっかり見ろよ。」



「どう見たって不公平だろぉが!!なにうやむやにしようとしてんだよ!
       あんたらだけ逃げようったってそうはいかねぇからな!!」


ハム子さんはそう言うとがっしりと銀さんの片方の手首を掴む。



「ウッセェなハム!!オメェらみてぇなハムは一人でもいたら即見つかんだよ!!
                   即アウトなんだよ!!察しろハム!!」



「ハムじゃねぇっつってるだろうがァァァ!!何?!アンタら何しに来たの!?
       あたしら助けに来たんじゃないわけ!?ここまで来といて結局
                自分だけ逃げ出すとかおかしいだろうが!!」


「んだコラ!!縄ほどいてやっただろーが!!」



『ちょ、ちょっと落ち着いてくださいよ二人とも・・・』


ギャーギャーと言い争っている銀さんとハム子さん。


もう少し音量を落としてもらいたいもんだ。
このままでは確実にこの場で見つかってしまう。


俺としても、正直言ってなんかもうめんどくさいので
銀さんの策にのりたいのも山々なのだが、ハム子さんの話ももっともである。


しかたがない



『あーもう・・・それじゃあ3:3で別れましょうよ・・・
いざっていう時のために、俺と銀さんが別れればいいでしょ。』



めんどくさそうにそう言えば、納得がいかないと銀さんが声を上げる


「待て待て待て!!俺一人でこんなハム2人も連れ歩けるわけねぇだろ!」



『仕方ないじゃないですか・・・とりあえず早くここから移動しないと・・・』



「ちっ・・・」



銀さんは少し不機嫌そうに後ろ頭をかくと
仕方がないと言う様に口を閉じた。


『それじゃあ俺とハム子さんともう一人。
             それから銀さんとあとの二人で別れましょう。』


そう言ってさっさとグループを決め、部屋から出て行こうとした時。



「ちょっと待った。」



再び銀さんに手首を掴まれた。



『・・・今度は何ですか・・・。』








「俺、今思い出したんだけどさぁ・・・猫探せて無くね?」









今それを言いますか・・・・


 


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bkm
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