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『んーやっぱり浸入口はここしかなさそうですね・・・』



さきほど猫が入っていった窓を見上げ、俺はつぶやく。
しかしまぁ、そこの窓はそれほど低い位置にあるわけでもなかった。



手は届くが、入り込むとなると少し高い。
おそらくあの猫は向かいの塀から飛び移ったようだが、
人間の俺たちにそんなことが出来るわけもなく・・・



「・・・しゃあねぇーな・・・俺がお前を肩車するから、
      お前はあの窓から入ってすぐ横にある扉の鍵を開けてくれ。」



銀さんのその言葉におれは窓の横の扉に視線を向ける。



なるほど、外側からは鍵がかかっていて開けることは出来ないが
一人でも中に入ることが出来ればそれも解決できる。




『わかりました。お願いします。』




すぐさましゃがみこんだ銀さんの肩に足をまたがらせる。
安定したのを確認するとそのまま銀さんは立ち上がった。



『うぉっ』



予想外の高さに少し驚く。


そういえば銀さんの身長は180近かったっけな・・・・



「入れそうか?」



『はい、全然いけそうです。』



十分な高さだったので容易に入ることは出来そうだ。




「・・・・お前って、本当に女の子なんだな・・・」




『は?』



あまりにも唐突に、何故かしみじみとした様子で銀さんがそんなことをつぶやく。


いきなり何を言うかと思えば・・・
意味が分からん・・・



『なんですか、いきなり・・・・』












「ふとももやわらかい。」










『・・・・』






「いででででっ!!ちょっ、イタイイタイ!!は、はげる!!」




無言で髪を引っ張った。




『・・・ったく、いらんこと言わんでくださいよ。』



それだけこぼすと
俺は窓枠に手をかけ、ビル内へと侵入をはたした。


ビルの床に降り立つと、すぐ横にあった扉の鍵を開ける。
すると、そとにはいまだに頭を抑えて若干涙目の銀さんがいた。


少し強く引っ張りすぎただろうか?
申し訳なさが芽生え、苦笑いをこぼした。








『いいですか、銀さん。中にはおそらく今までに誘拐された女性もいるので、
 なるべく音を立てないよう、犯人に気づかれないように行動してくださいよ。』



「わぁーってるって。」



あくびをかみ殺しながらめんどくさそうに銀さんはそう頷いた。



本当にだいじょうぶなのか・・・


とにかく、進むしかないか
こうして、無事浸入することに成功した銀さんと俺は
細心の注意をはらい、薄暗い廊下を歩いた。



すると、





「おい、一人帰ってきてねぇらしいぜ。」



男の声だ。




曲がり角の向こうから聞こえてくる。
俺が目を合わせると、銀さんは無言で頷いた。


もう少し声の方向へ近づくと複数の男の声が聞こえる。




「まさか、真撰組に見つかったんじゃねぇだろうなぁ?」



「いや、それはねぇだろ。」



二人・・・いや、三人か?



「しかしまぁ、こうも美人ばかり狙っていたら
   行動パターンも読まれてしまうだろう。囮捜査ということも考えられる。」



「女を囮にはさすがの真撰組でもせんだろう。」




「そりゃそうか。」



ガハハハハッと、下品に笑う三人の男の話を聞いて俺は少し首をかしげる。



どうも話がおかしい。



確か山崎さんの話によれば
ターゲットには年齢以外特にこだわりはないようであった。
容姿もバラバラだと聞いていたし。


いくら容姿がばらばらでも
彼らが言うように美人ばかりが攫われていればその共通点にいくらなんでも
真撰組だって気づくはずだ。





『どう言うことだ?』


思わず小さくもらした声に銀さんはピクリと反応した。



「どうした?」



そこで俺は事情を少し説明する。



『俺の聴いた話では、犯人は誘拐する女性に年齢以外
           特にこだわりはないという話でした。
         だけど、彼らは美人ばかり攫っているといってました。』



「あぁ。」



『いくらなんでも、美人ばかりさらっていたならその共通点くらい気づけますよ。』



「わかんねぇ〜ぜ?人間にゃ好みってもんがあるからなぁ〜
      間抜けなやつだったらそんな共通点に気づかねぇんじゃねぇの?」



んー・・・確かにそうかもしれない・・・



『そんなもんですかねぇ・・・?』



「そんなもんだろ?大して気にすることじゃねぇよ」



銀さんのそのことばに納得しかけた時、



俺はまだ見落としていることがあるのではないか?
と、なにか引っかかりを覚えた。








そうだ、やっぱりおかしい。





美人ばかりさらっている・・・?



それじゃあ彼女は?
何故攫われた?





『銀さん!やっぱりおかしいですよ!公子・・・いや、ハム子さんだっけ?
                          が攫われたんです。』



「はぁ?ハム子ってあのハム子?」


どのハム子かは知らないが銀さんには思い当たる人物がいるようだ。


『お知り合いですか?』


「あー・・・まぁな・・・色々あんだよ・・・」


若干遠い目をしている銀さんに、俺はもう一度話を続ける。



『美人ばかり狙ってるなんて言っておいて、
       ハム子さんを攫うなんておかしくないですか!?
           好みによるとか、そういう次元じゃないですよ!。』


そうだ、やっぱり何かおかしかったのだ。



「・・・なんか盛り上がってるとこ悪いけど、俺が言うのもアレだけどさ、
              由良ちゃん結構バッサリ言うよね・・・。」




『そうですかね・・・?』









「新八つれてくればよかったな・・・」




銀さんのそんな小さな呟きが俺の耳に残った。





 

 


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