時は流れテスト返却日。





結論からいって








どうやら俺たち三人とも見事に


合格点数を取れたようだ。












しかし、















「名前ちゃん!!あ、あの約そ」

















『はいはーい、
続き配るからみんな席もどれー』









話を切り出すもかぶせられる声。






聞こえていないのかと
もう一度声をかけるも・・・






「ちょ、約」



『黒木。』










これは完全なる無視だ。















なるほど。
どうやらあの約束を
平気で無かったことにするらしい。







「そうきたか・・・」






思わず苦い表情を浮かべて
そうこぼせば



心なしか名前ちゃんの口元が
上がった気がする。





俺が席へもどれば、金吾と虎若も



さっきの俺とのやりとりで
理解したらしい。








どうするべきかと
もう次の手を考えている。











「いや、これはもう
強引にいくしかないだろ。」






「だな。
約束破ったのあっちだし。
俺ら何も悪くないし。」





「目にものいわせてやろうぜ。」






上から虎若、金吾、俺。





顔を見合わせて
悪い表情を浮かべる三人。










なぁ。名前ちゃん。

約束はやぶっちゃいけないんだって



昔教わんなかった?










授業が終わり、
すぐに俺と虎若の部屋で作戦会議。





ていうか、ただの順番決め。













じゃんけんという
シンプルな死闘の末、



見事に一番の座をもぎ取った俺。






今頃安心しきっているであろう
名前ちゃんは




おそらく教室にひとり。









チャンスだ。










そうと決まれば
すぐに俺は目的地である教室へと



足早に向かった。





















3−3の標識のある教室が見えてくる。







開いたままの教室の扉には
小さく、名前ちゃんのいつもの

ジャージの色が見えた。







大変よろしい位置関係である。




背中を向けて
教室入り口前に立っているわけだ。






にやける顔を抑えられないまま、
勢いに任せて





俺はついに実行する。







腰に手を当てたっていた
名前ちゃんの腕の隙間から
手を伸ばす。









「名前ちゃんとったりー!!」












むにゅっ




あえて音を付けるならそんな感じ。








それから一瞬の沈黙の後、悲鳴。








『のあああああ!!』





『なああ!!?』





いきなりのことに
状況を理解できていないらしい
名前ちゃんは


ただパクパクと
魚のように口を動かした。






「ふっはー何それ
言葉になってないし。」






混乱して手もだせない今のうちに

しっかりと堪能させてもらう。




小さく耳元で笑えば
ピクリと強張る名前ちゃんの細い肩。






動揺したのか
手に持っていた荷物を
床にぶちまける。



下から持ち上げるように
なで上げたり
強弱をつけて揉んでみれば





抵抗のためか
胸を揉む俺の腕に
しがみつく名前ちゃん。





『な、何やってんだテメェ!!どつくぞ!!!』






「何ってさー約束したのは
名前ちゃんのほうでしょ?」






ていうか、赤い顔し
怒鳴られてもぜんぜん怖くないし。





いつものごとく力が入らないらしく、
その抵抗はあまりにも弱い。





俺の腕に
簡単につかまってしまうほど

小さな体。





逃げられないほどのその力の差。





手に感じるやわらかい感覚と、


近くに感じる
鼻をくすぐるような良い匂いに



急速に女を感じた。










大声を上げる名前ちゃんは

ただじたばたと俺の腕の中で
小さくもがくことしかできない。







『やっ、やめろ馬鹿!!
っ、なぁっ。』








一瞬だけど、急に色っぽい
高い声を上げる名前ちゃんに



俺も一瞬だけど頭の中が白くなった。









まじか、
こうすれば名前ちゃんは
こんな声をだすのか。











どうやら俺ってば
ギャップに心底弱いらしい。





頭を殴られたような衝撃が
俺の中を駆け巡る。








「なんか、あせってる
名前ちゃんって可愛くね?」









耳元でそうささやけば、
やはり
ピクリと肩を揺らす名前ちゃん。







そうか、耳も弱いのか。









『て、てめっ、
ぁじで、なっ、殴る・・・っ、』








調子に乗っていれば
のどから搾り出すように
こぼされたその言葉。







さすがにやばいかと
引き際を感じた俺は
仕方なく腕を緩めた。




「もうちょっと
その顔みてたかったなぁー」






ちいさくつぶやけば
その場に崩れ落ちる名前ちゃん。




肩で息をしているため、
体が上下に揺れていた。










「明日は虎若か金吾がくるかもな〜」






じゃんけんで決まった次の順番を
口にもらせば






















「何してんの団蔵?」






















おれの頭の中には
まるでなかった第三者の声。
















「あれ、三治郎いたの・・・。」










まさかの遭遇に、
ごまかすように後ろ頭に手をやる。











「約束ってさー・・・・何?」














今までそこにいたなら、
もちろん聞いていたであろう



俺と名前ちゃんの会話。








それを問う三治郎の声色に


思わず俺は
目を見張って固まってしまった。










おおよそクラスメイト。
友人を見るような
目つきではなかった。












いつもニコニコとした笑みが
トレードマークである三治郎だから



余計である。










「そ、それはまぁ、その・・・
アレだよね・・・・じゃ!!」










これ以上は
色々とまずいと感じた俺は
言葉を濁して





さっそうと廊下を駆け抜ける。















あれは、
このあいだの兵太夫の
絶対零度とさえ思えた



あの目とも比べ物にならないくらいに
冷え切った目だった。











「おぉ〜こわっ。」












しかし、
にやつく顔を戻せそうにもなかった。













 


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